〈平成23年度〉 間歇型一酸化炭素(CO)中毒モデルラット作成を行った。まず、CO暴露前日に、受動回避試験を行い、暗室で電気刺激し、明室に300秒以上待機することを確認する。CO濃度1000ppmで40分、3000ppmで20分で暴露し、ラットが意識消失させたが、翌日にも明室で300秒待機していた。その後、暴露後3日後、1週間、2週間、3週間後の明室での待機時間(秒)を計測し、同時に動物用MRI撮影装置を用い変化を調べた。対照として、CO非暴露群を作成し比較した。その結果、3週間後の受動回避試験による明室での滞在時間がCO非暴露群では試験開始日と比べ有意な差を示さなかったのに対して、CO暴露群では、有意に低下し、CO暴露により、遅発性の認知機能の低下が起こったことを確認した。脳MRIでは、変化は確認できなかった。 <平成24年度> CO暴露群とCO非暴露群、それぞれを3週間後に断頭し、脳組織(嗅脳、前頭葉、側頭葉、線条体、視床、海馬、中脳、橋、小脳)を摘出し、mRNAおよびタンパク質の解析のために保存する。RNA分画を抽出後、一部は、DNAチップによる遺伝子発現の網羅的解析を行った。その結果、いくつかの遺伝子については、有意な遺伝子発現量の増加ないし低下を確認することができた。現在、それらの遺伝子についてリアルタイムPCRによる追試験及びウエスタンブロッティングによるタンパク質発現を解析中である。これにより一酸化炭素暴露による脳内の分子生物学的影響が解明されれば、遅発性脳症の予防もしくは治療の手がかりになると考えられる。
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