研究課題/領域番号 |
23591716
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
今村 明 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (40325642)
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研究分担者 |
成田 年 星薬科大学, 薬学部, 教授 (40318613)
黒滝 直弘 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (20423634)
小澤 寛樹 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50260766)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 虐待 / エピジェネティクス / 発達障害 |
研究概要 |
近年、被虐待児の脳内で分子遺伝学的変化―DNAメチル化などのエピジェネティック異常―が生じている可能性があることが指摘されている。カナダのMeaneyらの研究グループは、児童虐待を受けた自殺者の死後脳では、虐待を受けていない自殺者やその他の原因で亡くなった対照者と比較して、一部の遺伝子のプロモーター領域にDNAメチル化が多くみられ、遺伝子発現が抑制されていることを示している。また、臨床的には被虐待児の中には発達障害児と類似した症状を呈するものもいる。我々は、被虐待児のリンパ芽球様細胞などの末梢組織由来細胞を用いて、発達障害児、健常対照児との比較により、DNAメチル化を検出することを計画している。対象として長崎県内の5施設で構築している「長崎県子どもの心診療拠点病院ネットワーク」により、10歳以上18歳未満の被虐待児、発達障害児のケースを集積する。すでに長崎大学ヒトゲノム倫理委員会に申請を行い、研究の承認を得ている。現在、3名の被虐待児(13.0±3.6歳)と3名の発達障害児(14.3±3.1歳)についてDSM-IV-TRを用いて診断し(被虐待児群:反応性愛着障害2名、解離性障害1名、発達障害児群:注意欠如・多動性障害2名、広汎性発達障害1名)、WISC-IIIあるいはWAIS-III、バウムテスト、等の心理検査を施行した。またユース・セルフレポート(YSR)、子ども用トラウマ症状チェックリスト(TSCC)、虐待を受けた子どもの行動チェックリスト改訂版(ACBL-R)などの評価表を用いて症状を評価した。今後、末梢血からリンパ球を分離精製し、リンパ芽球様細胞株を樹立し、Infinium HumanMethylation450 BeadChipにより全ゲノムを網羅したDNAメチル化解析を行う予定であるが、本年度はメチル化解析まで至った対象者はいなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
対象者やその代諾者から同意を得ることが予想以上に困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
長崎県では、長崎大学病院(精神科、小児科)、長崎県立こども医療福祉センター(小児科)、長崎県立精神医療センター(精神科)、医療法人カメリア 大村共立病院(精神科)、長崎県子ども・女性・障害者支援センター(児童相談所)の5施設で「長崎県子どもの心診療拠点病院ネットワーク」を構築しているが、次年度はこのネットワークで頻回に会議を開き、症例集積に努める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記のようにまずは症例の集積を最優先に行う。また、本年度協力が得られた対象者を含め、被虐待児10例以上、対照群10例以上に対してInfinium HumanMethylation450 BeadChipを用いた全ゲノムを網羅したDNAメチル化解析を行う予定である。
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