研究課題/領域番号 |
23591717
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
橋本 衛 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (20452881)
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研究分担者 |
池田 学 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (60284395)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交流 |
研究概要 |
レビー小体型認知症(DLB)は、全認知症の10-20%を占めるほど頻度の高い疾患であるにもかかわらず、その臨床経過はほとんど知られていない。本研究ではDLB患者の認知機能、神経所見、精神症状、画像検査所見、心理検査所見、介護負担などの長期経過を包括的に調査することを目的とする。本研究によって明らかにされたDLBの経過や予後についての知見は、適切な治療やケアの開発に重要な基礎資料となる。平成23年度はこの目的に対して下記の成果をあげた。 1.平成23年度は主としてDLB患者のエントリーと初年度評価を実施した。新規エントリー数は12例であった。その中の3例において、1年後のフォローアップ検査を実施した。データベースを作成し、検査で得られたデータを適宜データベースに登録した。 2.熊本大学医学部附属病院神経精神科認知症専門外来のデータベースを用いて、DLB患者23例とアルツハイマー型認知症(AD)患者55例の認知機能、精神症状、介護負担の1年間の経時的変化を比較した。その結果、DLBとADでは1年間の認知機能の低下速度に有意差はなかった。精神症状の変化量も2群間で有意差はなかった。DLBの介護負担を悪化させる要因として、認知機能低下よりも精神症状の方が強く関わっていた。DLB群では、罹病期間が短い患者ほど1年後の精神症状がより改善しており、この結果は、DLBの精神症状においては治療的介入を早期に行うほど効果が得られやすい可能性を示唆するものであった。これら知見を、第26回日本老年精神医学会学術総会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度の新規患者の登録数は12例であった。研究計画では30例を予定していたので、エントリー患者数については達成できていない。この原因については、当初の予想していたよりもDLB患者の受診が少なかったこと、研究への同意が得られなかった患者が多かったことなどが主たる理由と考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
データ解析には少なくとも20例のDLB症例が必要なため、エントリー期間を半年間延長し、さらに関連病院から積極的に患者を紹介してもらうように依頼することでDLB患者数を増やす。 平成23年度の研究により、DLB患者は治療的介入を行うことにより症状の進行が遅れる可能性が示された。この知見から、DLB患者の長期経過を調べるためには、本研究のような縦断的研究だけではなく、多数症例を対象とした横断的研究を組み合わせて実施する必要性が示された。そこで平成24年度には、熊本大学医学部附属病院神経精神科認知症専門外来の既存データベースを用いて、DLB患者の臨床症候を重症度別に比較し、DLBの長期経過を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定したよりも病院外での訪問調査が少なかったため、その費用がかからず当該研究費が生じた。平成24年度には、訪問調査数が増加する予定であり、当該研究費をその予算に充てる。
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