研究課題/領域番号 |
23591717
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
橋本 衛 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (20452881)
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研究分担者 |
池田 学 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (60284395)
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キーワード | レビー小体型認知症 / 長期経過 |
研究概要 |
本研究は、レビー小体型認知症(DLB)の認知機能、神経所見、精神症状、画像検査所見、心理検査所見、介護負担の長期経過を包括的に調査することを目的とする。本研究によって明らかにされたDLBの経過や予後についての知見は、適切な治療やケアの開発に重 要な基礎資料となる。平成25年度はこの目的に対して下記の成果をあげた。 1.DLB患者では高率にレム睡眠行動障害(RBD)を伴うことが知られており、臨床診断基準にも採用されている。しかしRBDを確定診断するためには睡眠時ポリソムノグラフィーが必要であるが、この検査は患者への負担が大きく、認知症患者に実施するには実用的ではない。そこでRBDの症状の一つである寝言が、DLBとアルツハイマー病(AD)との鑑別診断に有用であるかどうかを検証した。その結果、寝言(特に大声での寝言)がDLBとADの鑑別に有用であることが示され、論文発表した。 2.DLBでは他の認知症疾患と比較して妄想の頻度が高く、妄想は介護者への大きな負担になっていることが知られている。特に「配偶者の不貞を疑う」嫉妬妄想は、重大な暴力につながるなど、早期に発見し対応が必要な妄想である。われわれは、DLBを含めた認知症患者における嫉妬妄想の特徴を検討し、DLBではADよりも嫉妬妄想の頻度が有意に高いこと、DLBの嫉妬妄想は幻視と密接なつながりがあることを示し、この内容を第28回日本老年精神医学会総会シンポジウムで発表した。この知見については、論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DLBの睡眠障害(特に寝言)に注目した症候学的研究を海外雑誌に発表した。DLBの重症度とBPSDとの関連性を検討した横断研究については、海外雑誌に論文投稿中である。さらにDLB患者の嫉妬妄想の特徴を検討した症候学的研究も現在海外雑誌に投稿中である。 縦断研究については、エントリー患者の経過を追跡中であり、順調にデータは集積されている。当初の予定では、平成26年度からデータの解析と論文の執筆予定であるが、データベースへの登録がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は得られたデータを解析し、その結果を学会発表、さらに論文化し、海外雑誌に投稿する。さらに、現在投稿中の「DLBの嫉妬妄想」、「DLBのBPSDの横断研究」の2編の論文のアクセプトを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では熊本大学病院に通院中のDLB患者の臨床症候から画像所見までさまざまなデータを縦断的に集積し、その変遷を解析することを目的とする。通院が困難となった場合は、患者の自宅を訪問し、必要データを集積する予定であったが、通院中断例が当初の予定よりもはるかに少なかったため、訪問調査に必要な交通費が余剰となった。さらに、集積されたデータは適時データベースに登録予定であったが、その登録作業が遅れており、登録作業に携わる人員への人件費の支出が減少した。これらの2点が、次年度使用額が生じた理由である。 次年度は本研究の最終年度にあたるため、集積データの解析と研究成果の発表、論文化に重点をおく。そのため、速やかに集積データをデータベースに登録するための人件費を計上する。また、データ解析用の統計ソフトの購入のために使用する。さらに、国内学会への参加のための旅費、論文作成のための英文校正費や別刷り費、さらに研究成果の出版費用を予算として計上する。
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