研究課題/領域番号 |
23591718
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
池田 学 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (60284395)
|
研究分担者 |
橋本 衛 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (20452881)
平井 俊範 熊本大学, その他の研究科, 准教授 (40274724)
|
キーワード | 認知症 |
研究概要 |
熊本大学医学部附属病院神経精神科若年性認知症外来を受診した連続例の中で、FTLDの国際診断基準(Neary et al, 1998)を満たしたFTD10症例とsemantic dementia(SD)15症例ならびに対照群として年齢、性別、認知症の重症度を統制したAlzheimer病(AD) 50例、に対し、各種認知機能検査、食行動評価尺度を含む精神症状評価尺度、MRI、SPECTを実施し、これらをデータベースに蓄積した。当該研究実施中に、SDに関して新たな国際診断基準が普及したため(Gorno-Tempini et al, 2011)、既存の基準との整合性を確認した(池田ら,印刷中;Ichimi et al, in submission)。現在、FTDならびに健常高齢者の登録を継続している。 全般的な認知機能プロフィールを把握するのにはMMSEを用い、前頭葉機能ないし遂行機能障害の測定にはFrontal assessment battery(FAB)、Trail making test(TAT)、語流暢性検査を実施した。記憶機能の評価に関してはAlzheimer’s disease assessment scale-cognitive partの単語再生、単語再認の項目を用いた。主たる介護者に対しては、常同行動評価尺度であるStereotypy Rating Scale(SRI)、包括的な精神症状評価尺度であるNeuropsychiatric Inventory(NPI)などを実施した。食行動異常に関しては、我々が開発した食行動異常評価尺度(Ikeda et al, JNNP, 2002)を用いた。 現在、MRIとくに拡散テンソル画像(diffusion tensor imaging ; DTI)ならびにSPECT画像の予備的検討に入っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FTDのみ、画像検査が完遂可能な軽症例の受診が少なかったため、登録がやや遅れている。また、症例の登録を優先したため、健常高齢者の登録は現在実施中である。その他の対象の登録、各種検査の実施状況はおおむね順調である。
|
今後の研究の推進方策 |
症例の蓄積を続けるが、万一症例数が不足する場合は、すでにデータベース登録済みの平成22年度の症例も解析対象とする。 FTLDにおいて障害される食行動異常の神経基盤を明らかにする目的で、各々の食行動異常とFTDならびにSD例の脳の機能低下ないし白質神経線維の異常部位ならびに認知機能障害や他の精神症状との関連を検討する。すなわち、VBMを用いた既報の2研究とこれまでの動物実験などからの知見を合わせて、前頭葉眼窩面、側頭極、島回、扁桃体、視床などを廻る神経線維の異常を検討する。合わせて、SPECT画像と演算ソフト(MATLAB)を用いてSPMによる統計画像解析を平行して実施し、両手法の組み合わせ各々の食行動異常の神経基盤を検索する。評価尺度による各種食行動の異常と神経基盤との関連については統計ソフト(SPSS)を用いて検討する。また、食行動評価尺度の結果と神経心理学的検査結果や他の精神症状についても統計ソフトを用いて検討し、各種食行動と認知機能障害や精神症状との関連についても検討を加える
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究成果の一部を、フィリピンで開催されるアジア認知症会議、韓国で開催される世界老年精神医学会、長野で開催される認知症学会で発表し、複数の英語論文にまとめる予定である。
|