研究課題/領域番号 |
23591725
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
福居 顯二 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50165263)
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キーワード | 有機溶剤乱用 / 神経画像 |
研究概要 |
本研究では、乱用開始後1年以内の有機溶剤乱用初期の患者を対象とし、乱用初期の脳の障害を明らかにし、その治療法を確立することを目的としている。このため、京都府立医科大学附属病院精神神経科および京都府下の単科精神科病院に、通院あるいは入院中の有 機溶剤乱用初期患者20名と、患者群と背景情報をマッチさせた対照群20名を目的に、脳血流画像検査として123I-IMP SPECTを、有機溶剤による白質の線維連絡障害を評価するために拡散強調画像(diffusion tensor image:DTI)の撮像を施行予定で、併せてWAIS-III、WMS-R、WCSTの神経心理学検査と精神症状評価(PANSS,SANS)をおこない、これらの検査結果を総合的に解析する予定である。 本年度は、中期以降の乱用者一例に対して123I-IMP SPECTと各種神経心理検査を施行し、前頭葉の血流低下と前頭葉機能の低下がみられた。本症例については、学会発表及び論文発表を予定している。また、有機溶剤への依存を形成するメカニズムに、目先の報酬を求めてしまう衝動性が関与していると考え、それを明らかにすることが可能な課題を作成し、課題遂行中の脳活動を健常者において機能的MRIを用いて測定した。 次年度は、引き続き関係機関との連携を密にして対象患者のリクルートにさらに力を入れる予定であり、初期から中期にかけての乱用者(約3~5年の吸引歴)についても対象に繰り入れ、有機溶剤乱用による神経系に対する生物学的侵襲すなわち、機能的・器質的変化の有無を神経画像のアプローチにより把握することも検討している。また、本年度収集した健常者における機能的MRIの結果について解析し、有機溶剤乱用形成のメカニズムを明らかにするのに有用な課題かどうかを評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初対象としていた初期有機溶剤乱用者のリクルートが進んでいないため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き関係機関との連絡を密にして対象患者のリクルートに力を入れるとともに、初期有機溶剤乱用者のみならず、中期にかけて対象者の選定基準を広げてリクルートし、有機溶剤乱用による神経系に対する生物学的侵襲の影響を神経画像と神経心理学的検査を用いて明らかにしていくことを検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、症例のリクルートが進まず次年度に使用する予定の研究費が生じた。次年度は、対象患者、及び対照となる健常者のデータ収集、及び研究成果発表のための旅費、学会参加費、論文作成の際の英文校正のための費用として使用を計画している。
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