これまでの研究でうつ病の罹患や重症度が自律神経活動と関連することが示されているが、うつ病の治療予後のマーカーとしての自律神経活動の研究は行われていない。本研究は、DSM-IV診断基準による大うつ病患者を対象に睡眠中の自律神経活動を測定し、治療早期における自律神経の変化がうつ病の治療予後をどの程度予測するかについて検討することを目的として企画した。抗うつ薬有効例では、睡眠中の副交感神経活動が早期から改善するのではないかと推測していたが、本研究結果では、睡眠中の副交感神経活動は抑制される傾向を示した。この結果は、使用した抗うつ薬パロキセチンによる薬剤起因性の自律神経系への影響の可能性も否定できない。今回、重症を除いた未治療の大うつ病患者を対象としたため、地域の基幹病院である大学病院では、未治療の症例を集めることが困難であり、また、複数日にわたりセンサーを着用せざるを得ない煩雑さが、大うつ病の患者に受け入れられず、十分な症例数を得ることが出来なかった。今後、使用するSSRIを制限せず、症例数をさらに増やし、エビデンスを得るように研究を継続して行く予定である。
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