研究課題/領域番号 |
23591727
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
新村 秀人 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70572022)
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研究分担者 |
水野 雅文 東邦大学, 医学部, 教授 (80245589)
根本 隆洋 東邦大学, 医学部, 准教授 (20296693)
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キーワード | 精神科地域ケア / 統合失調症 |
研究概要 |
【目的】精神障害者のサクセスフル・エイジング(老年期の生活の豊かさ・満足)達成のプロセスに関わると考えられる向老意識と老後への準備行動につき継時的に検討する。 【方法】あさかホスピタルのデイナイトケアに通所し、2002年より地域生活する統合失調症者49名(地域生活群)に対し、2008, 2010, 2012年に向老意識・老後への準備行動・QOL(WHOQOL26)・社会機能(Social Fuinctioning Scale: SFS)を評価し、4年間の変化および関連因子につき検討した。同院に入院継続中の統合失調症者30名(入院群)の評価も2011年に行い比較検討した。 【結果】地域生活群の属性は、2008年において平均年齢57.6±8.7歳、平均罹病期間32.4±10.8年で、入院群と有意差がなかった。地域生活群の4年間の変化は、向老意識・QOL・社会機能では不変であったが、準備行動は9.53±2.00→10.94±2.19と活発になっていた(対応のあるt検定において有意差を認めた)。入院群との比較では、地域生活群の方がQOLが有意に高く、向老意識・準備行動・社会機能は2008年の地域生活群と入院群で有意差がなかった。Pearsonの相関係数をとると、地域生活群は2008年では準備行動は向老意識・QOL・社会機能と逆相関していたが、2012年では正の相関となっていた。向老意識・準備行動・QOLいずれも年齢との相関は認めなかった。 【考察】地域生活群では4年間の経過で、向老意識・QOL・社会機能は不変だが、老後への準備行動は活発になっていた。向老意識は変わらずとも老後への準備行動が盛んになってきているのは、福祉や支援の成果であるとともに、当事者の現実検討力の向上を反映している可能性もある。地域で高齢化しつつある統合失調症者であっても、サクセスフル・エイジングの実現が可能と言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究のフィールドが福島県郡山市にあるが、平成23年3月に生じた東日本大震災のため、同市内にある医療機関も被災したため、震災後の数か月間は復興のための作業を行っており、調査を行うことができなかった。また、その後使用できなくなった病棟の再編、職員の減少の影響もあり、調査はやや遅れていた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、引き続き多面的な評価を行い、さらに変数を加えて、継時的な変化につき詳細な検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
パソコンやプリンターの備品、翻訳、通信運搬費、および第33回日本社会精神医学会・国際森田療法学会出席、福島県郡山市における調査など。 なお、未使用額の発生は、効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。
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