研究課題/領域番号 |
23591728
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
八田 耕太郎 順天堂大学, 医学部, 准教授 (90337915)
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研究分担者 |
岸 泰宏 日本医科大学, 医学部, 准教授 (60256930)
小田原 俊成 横浜市立大学, 大学病院, 准教授 (00244426)
竹内 崇 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (70345289)
杉田 学 順天堂大学, 医学部, 准教授 (20322414)
臼井 千恵 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70453587)
上條 吉人 北里大学, 医学部, 講師 (90255266)
町田 裕 順天堂大学, 医学部, 准教授 (90317470)
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キーワード | せん妄 / ラメルテオン / ナチュラルキラー細胞 / ランダム化臨床試験 / 嚥下性肺炎 |
研究概要 |
目的:睡眠覚醒リズムに関与するmelatoninのアゴニストであるramelteonはせん妄予防効果をもつか、せん妄発症と炎症機序の関連性からIL-1βおよびNK活性の変化はせん妄発生の予測指標となるか、せん妄に対する抗精神病薬投与は重篤な副作用を惹起するかについて検証した。 方法:平成23年7月~25年3月、多施設共同研究グループを組織し、救急入院する患者を対象にramelteonあるいは乳糖にランダム割付し、その後のせん妄発生の有無を評価するとともに,入院後最短の早朝およびその翌朝のIL-1β、NK活性を測定した。23年10月~24年9月には、34の総合病院でせん妄に対して抗精神病薬投与する症例を蓄積した。研究計画は順天堂大学医学部附属練馬病院および各共同研究施設の倫理委員会の承認を得、インフォームド・コンセントを得て実施した。 結果と意義 (1) 乳糖群では34例中11例にせん妄が発生したが、ramelteon群では33例中せん妄が発生したのは1例のみであった(32% vs. 3%, p=0.0028)。ランダム化臨床試験において、国際的に初めてramelteonのせん妄予防効果を実証した。成果はJAMA Psychiatryに掲載され、Editorialにて、せん妄の臨床を治療から予防にシフトさせるものと評価された。 (2) せん妄発生群は非発生群と比較して入院当初のNK活性が有意に増加(5.6% [SD 8.0] vs. -1.1 [8.0], p=0.019)し、陰性尤度比は0.16であった。入院時のDRS-R98の評点を組み合わせると陽性尤度比は7.8になり、せん妄予測のバイオマーカーとして有用であることを初めて実証した。 (3) 2,453例のうち重篤な有害事象は22例(0.9%、うち嚥下性肺炎17例)であり、それによる死亡例は発生しなかった。これに対して平均CGI-Iは2.02 (SD 1.09)で54%が1週間以内に収束しており、抗精神病薬の効果は明瞭であった。医学的管理下でのせん妄に対する抗精神病薬の安全性と効果を大規模な前向き観察研究水準で実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
せん妄の予防および予測研究は順調に終了し、その成果はJAMA Psychiatryなどの国際誌に掲載された。しかし、せん妄治療のランダム化臨床試験への症例登録が予想外に少なく、統計学的パワーの観点から困難をきわめたため。
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今後の研究の推進方策 |
せん妄の治療指針の改訂のためには、薬物療法に関するデータが必須であるため、困難をきわめたランダム化臨床試験の代替として、専門医を対象にした治療に関する調査を行い、コンジョイント分析によってエキスパート・コンセンサスを作成する。その成果を、これまでに得られた予防および予測の成果と統合して、せん妄の指針の改訂版を公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
せん妄の予防RCT、予測研究、および医療安全研究は順調に進捗して大きな成果を得たが、治療のランダム化臨床試験が予想外に滞ったため。 せん妄治療のランダム化臨床試験が滞った代替として、せん妄診療のエキスパートコンセンサス調査を加え、コンジョイント分析を用いて実施したい。そのために、せん妄診療のエキスパートである日本総合病院精神医学会専門医300名余りへのエキスパートコンセンサス調査票の送付、および回収とそのデータ整理に使用する。
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