研究課題/領域番号 |
23591729
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
井関 栄三 順天堂大学, 医学部, 教授 (30203061)
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研究分担者 |
藤城 弘樹 順天堂大学, 医学部, 非常勤講師 (20536924)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | レビー小体型認知症 / 免疫組織化学 / オートファジー・ライソゾーム系 / 123I-MIBG心筋シンチグラフィー / 18F-FDG PET |
研究概要 |
(1)レビー小体型認知症(DLB)の早期診断に関する病理研究として、DLB剖検脳を用いてオートファジー・ライソゾーム系の免疫組織化学的検討を行った。オートファジー・ライソゾーム系の関連蛋白に対する3つの抗体を用いて検討した結果、DLB脳では、コントロール脳やアルツハイマー病 (AD)脳と比べて、嗅内野や扁桃核などでmicrotubule-associated protein 1A/1B light chain 3 (LC3)免疫活性が増加しており、LC3免疫活性は同部位のレビー小体や神経突起などレビー関連構造物に特異的に同定された。Immnoblottingでは、DLB脳のdetergent-insoluble fractionにautophagozosomal LC3-II isoformの特異的蓄積を認めた。このことは、DLBの病態機序に、オートファジー・ライソゾーム系が深く関与していることを示している。(英論文1)(2)DLBの早期診断に関する臨床研究として、DLBの診断とADとの鑑別に有用とされる123I-MIBG心筋シンチグラフィーを用いて、軽度認知障害レベルで、幻視やパーキンソニズムなどDLBの中核症状をもたない症例の検討を行った。これらの症例は、レム睡眠行動障害や18F-FDG PETで後頭葉視覚野の糖代謝低下を伴っていた例など、DLBへの進行が疑われた例であった。いずれも、心電図や心血管造影などで心臓に明らかな病変は認めなかったが、123I-MIBG心筋シンチグラフィーでは、いずれも初期像、後期像ともMIBGの取り込みが低下し、心臓交感神経の変性を示唆していた。このことは、123I-MIBG心筋シンチグラフィーは、DLBの診断に有用であるのみならず、中核症状をもたないDLBの前駆状態の診断にも有用であることを示している。(英論文2)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的であるレビー小体型認知症の早期診断についての臨床研究と病理研究のいずれでも、一定の成果が得られたことによる。また、本報告書にまだ記載していない研究の成果も、現在論文にしている。
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今後の研究の推進方策 |
病理研究については、DLBの初期診断に有用である18F-FDG PETの特異的糖代謝低下部位について、レビー病理やアルツハイマー病理などその神経病理学的基盤を明らかにする研究を行う。また、臨床研究については、18F-FDG PETの後頭葉視覚野の糖代謝低下がDLBにどの程度特異的で、DLBの前駆状態でもすでに低下がみられるかを明らかにする。また、レム睡眠行動障害などDLBの前駆状態でみられる可能性のある症状が、前駆状態でどの程度の割合で、どの時期から出現するかを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
病理研究については、試薬など消耗品の他に、備品として病理染色に必要なパラフィン溶融器を購入する予定である。また、臨床研究については、FDG PETで必要な試薬や印刷用紙、認知機能検査の検査表などを購入する予定である。また、臨床・病理研究の研究補助に対しての謝金にも使用する予定である。
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