研究課題/領域番号 |
23591729
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
井関 栄三 順天堂大学, 医学部, 教授 (30203061)
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研究分担者 |
藤城 弘樹 順天堂大学, 医学部, 准教授 (20536924)
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キーワード | レビー小体型認知症 / 免疫組織化学 / α-シヌクレイン病理 / タウ病理 / Aβ病理 / 頭部FDG-PET検査 / 心筋MIBG心筋シンチグラフィー検査 / 前駆状態 |
研究概要 |
①レビー小体型認知症(DLB)の早期診断に関する病理研究として、頭部FDG-PET検査においてDLB患者で特徴的な糖代謝低下を示す後頭葉視覚領野と、これに続いて低下を示す後部帯状回や頭頂連合野について、DLB剖検脳におけるα-シヌクレイン、タウ、Aβ病理を免疫組織化学を用いて定量的に検索した。その結果、後頭葉視覚領野の低下の神経病理学的基盤はレビー病理であるα-シヌクレイン病理であり、後部帯状回や頭頂連合野の低下の基盤はアルツハイマー病理であるタウ病理とAβ病理であることが示唆された(英論文1)。これはDLBとアルツハイマー病(AD)の鑑別や、そのための機能画像の評価の基礎となる研究成果であると考えられる。 ②DLBの早期診断に関する臨床研究として、DLBの前駆状態でどのような臨床症状が生じているかについて、DLB患者、AD患者、正常コントロール者に対してアンケート調査を行った。その結果、認知機能障害を生ずる数年前から、レム睡眠行動障害、自律神経症状、嗅覚障害などのパーキンソン病でみられる非運動症状を呈する割合がDLB患者で有意に高いことを見出し、DLBの臨床的な早期診断に有用であることを示した(英論文2)。また、DLBの機能画像診断については、DLB患者に特徴的な所見である頭部FDG-PET検査の後頭葉視覚領野の糖代謝低下所見が前駆状態患者においても認められること(英論文3)、心筋MIBGシンチグラフィー検査における心筋交感神経活動の低下所見が前駆状態患者にも認められることを見出し(英論文3)、これらの検査が早期発見に役立つ可能性を示した。このようなDLBの前駆状態患者における早期臨床症状、早期画像所見に関する知見を積み上げることによって、DLBの早期診断、早期介入が可能になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的であるレビー小体型認知症の早期診断についての臨床研究と病理研究のいずれでも一定の成果が得られ、複数の英文論文として報告できたことによる。
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今後の研究の推進方策 |
病理研究については、DLB患者の覚醒や視覚認知とも関連すると考えられる視床下部のhypocretin神経細胞がDLBでどのように変化しているかを、DLB剖検脳とAD剖検脳を用いて定量的に検討する予定である。また、臨床研究については、DLBの前駆状態患者の縦断的フォローアップを行い、DLBへのコンバートの割合を算出して、フォローアップ開始時の臨床的、画像検査の特徴を検討し、DLBへのコンバートのリスクファクターを見出す予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
病理研究については、試薬など消耗品の購入に用いる予定である。また、臨床研究については、FDG-PETで必要な試薬や印刷用紙、認知機能検査の検査表などを購入する予定である。また、臨床・病理研究の研究補助に対しての謝金にも使用する予定である。
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