研究課題/領域番号 |
23591730
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
稲本 淳子 昭和大学, 医学部, 准教授 (20306997)
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研究分担者 |
池田 朋広 昭和大学, 医学部, 特別研究生 (50572872)
中坪 太久郎 淑徳大学, 社会学部, 講師 (90456377)
杉沢 諭 昭和大学, 薬学部, 助教 (50595949)
三村 將 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (00190728)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 認知機能 / 心理教育 / SST / 退院支援 / 認知機能改善療法 |
研究概要 |
本研究では、昭和大学医の倫理委員会の承認を得て、プログラムの効果と認知機能との関連について検討を行った。対象は、急性期型精神科病院亜急性期病棟入院中の統合失調症患者で、退院支援プログラム(心理教育プログラム+SST,週1回60分×8週)のみを行った単独群37名と、退院支援プログラム+認知機能改善療法(週1回45分×12週 記憶,注意,実行機能を対象としたトレーニング)を行った併用群5名の計42名。神経心理学的検査にて認知機能における各領域について評価を行い、プログラムの効果測定を計る指標(DAI-10 ,SAI-J, GAF, SCoRS-J, GSES)を用いて、両群間の差と介入前後の差を、二元配置の分散分析によって求めた。 結果、(1)対象サンプルの背景因子としては、PANSS 合計92.9±17.3・陽性症状22.9±5.0・陰性症状25.5±5.0で、陰性症状の方が高値であり、病前IQ98.0±11.0で知能の遅れはなく、プログラム施行前後比におけるCP換算量の有意差はなかった(p=0.796)。(2)効果測定では、SAI-J (p=0.001)、GAF (p=0.014)と preとpostで有意差があり、退院支援プログラムの効果が認められた。認知機能の改善を組み合わせることによる効果の促進については、SCoRS-J (p=0.013)のみで交互作用がみられた。それ以外の指標では交互作用が認められなかった。(3)認知機能と各指標の相関を見たところ、認知機能の改善(r=.519 p=0.001)及び作動記憶、注意・遂行機能に陰性症状との関連が示唆された。(4)併用群の認知機能改善療法前後のスコアを比較したところ、記憶、実行機能、注意において改善がみられた。(5)過去2年間に退院支援プログラムを受けた者51名に追跡調査をしたところ、43名(84%)が再入院せず地域生活を行っていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず、退院支援プログラムは定期的に行われ、単独群のデータの集積は37例と概ね順調に進んでいる。また、両群の介入前の指標については、認知機能も含め詳細なデータが集積されてきている。一方、認知機能改善療法併用群は、5例と症例数が少なく、当初の予定よりデータの集積に時間を要している。退院支援プログラム単独群に関しては、当初24年度に予定していた追跡調査まで行っているが、認知機能改善療法併用群については、症例数が足りていないため、追跡調査を行う準備もできていない。
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今後の研究の推進方策 |
認知機能改善療法併用群のサンプルを増やしていくことに焦点を置いた対応の検討が必要である。また、現在のところ、認知機能の改善は、SCoRSのスコアとの関連は示されているものの、他の効果測定指標との関連が認められないこともあるため、認知機能とプログラム効果測定指標との間をつなぐ何らかの要因についても探索的に評価を検討していく必要があるものと考えている。さらに、認知機能改善療法併用群を増やし、両群への追跡調査によって、退院後の社会生活への影響についても比較検討を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
認知機能改善療法併用群におけるサンプル数を大幅に増やす必要があるため、認知機能改善療法を行う心理士を新たに研究費で雇うことを検討している。また、データの保管と入力と解析を行うにあたり、パソコンがたりないため、追加購入を検討中である。
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