研究課題/領域番号 |
23591730
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
稲本 淳子 昭和大学, 医学部, 准教授 (20306997)
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研究分担者 |
池田 朋広 昭和大学, 医学部, 特別研究生 (50572872)
中坪 太久郎 淑徳大学, 社会学部, 講師 (90456377)
杉沢 諭 昭和大学, 薬学部, 助教 (50595949)
三村 將 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (00190728)
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キーワード | 認知機能 / 心理教育 / SST / 退院支援 / 認知機能改善療法 |
研究概要 |
統合失調症を対象とした2つのプログラムの効果と認知機能との関連について検証した。a)退院支援プログラム(心理教育プログラム+SST,週1回60分×8週)のみを行った単独群82名への評価と、b)退院支援プログラム+認知機能改善療法(週1回45分×12週 記憶,注意,実行機能を対象としたトレーニング)を行った併用群9名への評価を行い改善効果を確認した。 a)単独群では、男性36名女性46名、平均年齢47.2歳を対象とし、評価指標を用いて、介入前後の指標の結果をX2検定にて比較したところ、CP換算量の有意差はなく、GAF (p<0.01) ,DAI-10(p=0.008) ,SAI-J(p<0.01), SCoRS-J客観評価(p=0.009)において有意な改善が認められた。また、プログラム終了後、地域に退院できた群69名と、退院できなかった群13名で指標の結果を比較したところ、GAF pre(p=0.01),GAF post(p=0.001), SCoRS-J主観評価 pre(p=0.045), SCoRS-J客観評価 pre(p=0.003)において有意差が見られたことから、退院の可否は精神症状よりも認知機能の影響を受けている可能性が示唆された。 b)併用群では、男性2名女性7名、平均年齢39.7歳を対象とし、介入前後成績の平均値の比較をWilcoxonの符号付順位検定にて行ったところ、記憶:JVLTの再生数(p=0.038), JVLTにおけるSemantic Clustering Rate(SCR)得点(p=0.035)と、実行機能:WCSTのカテゴリー達成数(p=0.007)において有意差が確認された。また、注意:CPTの正反応数(p=0.340),反応時間(p=0.173)については有意差がなかった。この介入は、認知機能における記憶と実行機能の改善に効果があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず、退院支援プログラムは定期的に行われ、データの集積は82例と順調に進んでいる。また、両群の介入前の指標については、91例と認知機能も含め詳細なデータが集積されてきている。一方、認知機能改善療法併用群は、9例と症例数が少なく、当初の予定よりデータの集積に時間を要している。 初年度1名で認知機能改善療法を行なっていたことで計画に遅れが出たため、24年度は年度の初めから認知機能改善療法を行なえる者を新たに訓練しながら、2名体制になるように進めたが、その者が24年度末をもって退職となってしまった。結果的に、併用群の症例数を上げるためには、あまり貢献することはなかった。
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今後の研究の推進方策 |
認知機能改善療法実施群における認知機能の改善傾向と、退院促進プログラム単独群の介入効果については、それぞれ確認がなされた。一方、認知機能改善療法併用群についてはサンプルが少なく、認知機能の改善を組み合わせることによる退院促進プログラムの効果促進の程度を測定するには、統計的解析に足る数が得られていない。今後は、認知機能の改善と退院促進プログラムを組み合わせた併用群のサンプルを増やしていくことに焦点を置いた対応が必要である。
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次年度の研究費の使用計画 |
認知機能への介入を行うために使用しているコンピューターは、科研費申請以前に購入したものを使用していたが、最近調子が悪く、認知機能改善療法の症例数を上げることへの支障になっている。そのため、介入用パソコンの購入を検討している。また、最終年度の論文執筆を行うに当たり、解析用と入力用のコンピューターを分ける必要性も出てきており、その購入も検討したい。 また、海外誌への論文投稿も視野に入れており、翻訳を業者に依頼する予定で、既に邦文の論文を執筆中であり、翻訳業者の選定にも取り掛かっている。また、雑誌によっては、投稿にあたり実費負担がある場合もあり、投稿先の雑誌を検討するとともに、研究費の使用配分も検討している。執筆にあたっての文献の購入も予定している。
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