研究課題/領域番号 |
23591734
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
小路 純央 久留米大学, 医学部, 講師 (50343695)
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研究分担者 |
森田 喜一郎 久留米大学, 高次脳疾患研究所, 教授 (20140642)
柳本 寛子 久留米大学, 医学部, 助教 (00441676)
内村 直尚 久留米大学, 医学部, 教授 (10248411)
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キーワード | うつ病 / 復職支援プログラム / 多チャンネルNIRS |
研究概要 |
休職中のうつ病と診断された外来通院患者を対象に、久留米大学病院デイケアセンター内において、IMR(Illness Management and Recovery)、集団認知行動療法、軽作業、軽スポーツを組み合わせた包括的復職支援プログラムを毎週火曜日、木曜日の週2回、3ヶ月間を1クールとして実施している。 評価方法は、患者背景、性格検査(田中ビネー検査)、精神症状としてBDI-II、ハミルトンうつ病評価尺度(以下、HAM-D)、QID-S、Global Assessment Function(GAF)、QOL-26(WHO)、SASS、職業準備性評価として、標準化評価シート(うつ病リワーク研究会)、今回休職に至った心理社会的要因(自由記述)の調査を行っている。また今回新たに本研究の主課題である多チャンネルNIRSを施行した。課題は「通常しりとり」「生物しりとり」及び「言語流暢」課題とした。評価はプログラム施行前後で行い検討している。 現在までの研究成果は、うつ病復職支援プログラムを行う事で、復職群、非復職群ともにプログラム施行後、BDI-II、HAM-Dともに有意に低下した。一方社会適応能力の評価尺度であるSASSは、復職群は有意に改善したものの、非復職群はプログラム施行前後で有意な差はなかった。このことは、BDI-II、HAM-Dのみの評価での復職判定は困難出ることが示唆された。NIRS計測では、左右総チャンネルのoxy-Hb変動量は、プログラム参加後に生物しりとり、語産生課題で増大した。左右前頭極部において、生物しりとり課題で、左右側頭葉部においては、しりとり課題で、復職群が有意に増大した。HAM-DとOxy-Hbの変動量に有意な負の相関が観察された。うつ病復職プログラムにおいて、神経心理学的評価に加え、NIRSを用いた精神生理学的評価も客観的評価として有用と考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
プログラムを施行するに当たり、本研究の趣旨を書面および口頭にて説明し、同意を得たうえで検査を行っているが、ほぼ全例から同意を得ることができている。現在うつ病復職支援プログラムは、集団認知行動療法やIMRなどのプログラムの運営上から、1クール8名までを定員としており、年間3クールを行っている。当初の最大人数としては、2年間で48名の予定であったが、平成23年4月~平成25年3月までに、22名の方がプログラムに参加され、当初の予定人数より少なかった。このことは1名の対象者に対して3クールまでの参加を認めており、複数のクールに参加する人が少なくなかったことによる。 また本研究プログラムを施行して、明らかになったこととして、外来通院中にうつ病と診断されていたものの、復職支援プログラムを施行していく中で、双極性障害などに診断を変更したものもいた。このことは、外来通院での診断の難しさが判明したように思われる。またこのこから、検査を評価するに当たり、疾患群を分けて調べていく必要も重要と考えられ、当初の予定より遅れることは予想されるが、症例数を増やしていくことで、各疾患における有効性や問題点も判明すると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き共同研究者らとともにうつ病復職支援プログラムを継続して行っていく。その中で復職支援プログラムを施行前後で各種心理検査やNIRSなどを用いた精神生理学的評価を行い、相互における関連性を調べていく。また実際に復職した群と復職出来なかった群とでの比較を行う。さらに対象となる年齢性別を一致させた健常者についても各心理検査やNIRS計測を行い、うつ病患者との比較検討を行う。これら結果をまとめ研究代表者や共同研究者は国内外の学会において、報告を行う予定にしている。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費については、現有の装置のメインテナンス費や各種心理検査費用、データ集積のための保存用のCD-ROMやハードディスクなどの物品費、さらには国内外の学会や論文投稿にかかる費用や研究補助者への謝礼、その他の雑費として計上していく。
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