研究課題/領域番号 |
23591738
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研究機関 | (財)東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
飛鳥井 望 (財)東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, 副所長 (30250210)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 外傷性悲嘆 / 認知行動療法 / 暴力的死別 / 外傷後ストレス障害 |
研究概要 |
「外傷性悲嘆治療プログラム」とは、事故・事件被害者遺族及び自死遺族を対象として、外傷性悲嘆(PTSDを伴う複雑性悲嘆)に焦点を当てた認知行動療法である。プログラムは1回60~90分、約15回の個別面接であり、「心理教育」、「回避対象への段階的接近練習」、「死別体験記憶の反復想起と陳述」、「故人の思い出の振り返り」、「故人との想像上の対話」の各技法から構成される。本年度はまず、これまでの予備研究(研究代表者が治療実施した非対照試験)の結果が国際誌に掲載された。その他、治療プログラムに関する邦文総説論文を発表した。また研究代表者以外の複数の治療者による非対照試験に着手するため、マニュアルならびに各種フォームを修正し、あらたにトレーニング研修を実施した。 対象症例のエントリー基準は以下を満たす者である:(1)近親者・パートナーを事故・事件・自殺で失った遺族、(2)年齢18歳以上65歳未満、(3)死亡時より6ヵ月以上経過、(4)改訂出来事インパクト尺度合計得点30点以上でかつ複雑性悲嘆尺度合計得点30点以上であり、PTSD症状を伴う複雑性悲嘆を認める、(5)週1回の通院・通所が可能である。一方、除外基準は以下である:(1)切迫した自殺の危険、(2)過去6ヵ月以内に自殺企図ないし自傷行為の既往、(3)十分量の薬物療法が優先されるような抑うつ状態、(4)精神病性障害の既往、(5)認知症ないし知的障害の存在、(6)すでに認知行動療法ないしはEMDRによる治療を 受けたことがある。上記のエントリー基準、除外基準を満たす新規患者4例(交通事故2例、他の事故1例、自死1例の遺族)についてプログラム導入し、うち2例は治療終了しいずれもあきらかな症状改善を得た。また症例はすべて研究代表者が面接の録画ないし録音内容に基づいて、原則として毎週のスーパーヴィジョンを行った。来年度に向けて、引き続き症例の蓄積をはかる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の目標としてプログラムの実施方法や各種フォームの見直し、ならびにスーパービジョンの方法を定め、症例の蓄積を開始できた。研究代表者による遠隔スーパービジョンにより円滑にプログラムのセッションを進められることを確認できた。しかしながら東日本大震災の影響により、被災地岩手県の研究協力者の活動が大きく制限されることとなった。そのためあらたにトレーニング研修を実施し、研究協力者若干名の増加をはかったが、症例蓄積に遅れを生じた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に引き続き、研究代表者の個別スーパービジョンの下で、外傷性悲嘆治療プログラム実施症例の蓄積を行ない、プログラム実施前後での症状評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
東日本大震災の影響による研究進捗の遅れのため70万円の繰り越しが生じた。次年度の研究費使用計画は以下の通りである。賃金 40万円;謝金 25万円:旅費 60万円:図書 10万円:消耗品 45万円合計 180万円
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