研究課題/領域番号 |
23591741
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研究機関 | 独立行政法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
荒井 由美子 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 長寿政策科学研究部, 部長 (00232033)
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研究分担者 |
上村 直人 高知大学, 医歯学系, 講師 (10315004)
熊本 圭吾 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 長寿政策科学研究部, 室長 (00393174)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 認知症 / 自動車運転 / 家族介護者 / 心理教育的介入 / 自己効力感 / 信頼性 |
研究概要 |
運転中止が必要となる認知症患者の家族介護者が抱える困難や心理的な負担についての先行研究は極めて少なく、稀少な介入研究であるStern(2008)らの研究では、心理教育的介入により、介護者の心理的側面のアウトカム指標が改善したと報告されている。そのアウトカム指標の一つとして、患者の自動車運転問題に関する介護者の自己効力感尺度(以下、運転問題自己効力感尺度)が作成されている。安全な運転の継続が困難となった認知症患者の家族介護者に対する介入効果を検証する上で、この評価尺度は有用であると考え平成23年度の研究では、同尺度の日本語版を作成し、その信頼性の検討を行った。 Sternらの作成した運転問題自己効力感尺度について、原著者の許可を得て日本語に訳出し、逆翻訳を実施し、原著者による承認を得た。次いで、高知大学医学部附属病院神経精神科外来を2011年2月から11月に受診し、新規に認知症あるいは認知症疑いとの診断を受けた外来患者のうち、自動車運転免許を保有し、運転をしている者の家族介護者で、研究への同意を得られた18名を対象とし、再検査および内的整合性について信頼性を検討した。その結果、運転問題自己効力感尺度日本語版には、十分な信頼性が認められ、基礎的な妥当性も認められた。この結果から、運転問題自己効力感尺度日本語版は、平成24年度以降に実施する「認知症高齢者の自動車運転を考える家族介護者に対する支援マニュアルCopyright」を用いた介入効果についての研究における、重要なアウトカム指標の一つとして利用可能となり、本尺度をアウトカム評価に含めた介入研究を、計画通り実施することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に計画していた、運転問題自己効力感尺度日本語版の作成と信頼性および妥当性の基礎的な検討を終えた。並行して、介入研究のための予備調査も実施し、評価項目の改善も、計画通り実施した。平成23年度末の時点において、本研究は、計画通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
高知大学病院精神科外来にて、新規に認知症との診断を受け免許を保有し日常的に運転している外来患者及び、主介護者であり患者と同居している家族介護者の連続例150組を目標に、介入研究を実施する。介入群と待機群を準ランダム化にて割り付けし、3ヶ月の介入期間、および待機期間の後、両群におけるアウトカムに関する比較を行う。十分な例数が確保されるまで、介入を継続する。この間、適宜、計画修正の必要性について検討を行うと共に、可能な範囲において統計的解析を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
出張旅費について:平成23年度において、旅費を計上していたが、出張者の日程調整が困難となったため、旅費としての予算執行を中止した。平成24年度においては、家族介護者への介入を行うにあたり、研究分担者であり、介入を実施する高知大学の上村と、研究代表者・荒井および分担研究者・熊本との間で、緊密な協力体制のもとに研究を進める必要があるため、打合せにかかる旅費を使用する予定である。また、平成23年度における成果を発表するため、学会旅費が必要である。その他:上記計画を遂行するために、上述の項目の他に、印刷にかかる費用(質問票の印刷)、通信費(切手代)、資料整理のための人件費、資料購入費、資料翻訳費、コンピュータソフト購入費が必要である。個人情報保護の観点から、データの保管や解析において、他の機器と分離しての保管を実施するなど、必要な措置を取るための経費を使用予定である。また、平成23年度の研究成果を発表するために、論文投稿料、及び英文校閲料を使用する予定である。
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