研究課題/領域番号 |
23591749
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松下 明 筑波大学, サイバニクス研究コア, 助教 (80532481)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 拡散テンソル画像 / 脳腫瘍 / 標準脳 / 拡散強調画像 / 浸潤 / 圧迫 |
研究概要 |
当該年度では、(1)MRI画像内の構造の判別分析、(2)白質構造のクラスター分析、(3)正常例・脳腫瘍患者例への適応を行った。(1)MRI上に写る構造は脳以外にも様々あり、頭皮、頭蓋骨、眼球やバックグランドノイズなどは解析の妨げになる。そのため、まず、これらと脳とを区別するためのbrain-maskが必要であり、T1-WIおよびT2-WIの情報を用いたクラスター分析を行い、その結果に基づいた判別分析を用いたbrain-maskを作成するアルゴリズムを作成した。これにより、自動的にbrain-maskを作成することができるようになった。このアルゴリズムは同時に、白質、灰白質、髄液を判別することが可能であった。この結果を用いることで、今後の白質構造分析にかかる時間の節約とアルゴリズムの簡素化に貢献できると考えている。(2)Diffusion tensor image (DTI) の元画像となる複数のDWIを入力として、脳白質のクラスター分析を行った。その結果、白質線維の方向性を反映した領域の判別が可能であった。また、この方法はより簡易なモデルであるsingle tensorを想定していないため、これまで用いてきたsingle tensor DTIを利用するものに比べ、より細かい判別が行えた。この結果は、今後も設定した研究の目標に向けて研究を進めることの妥当性を示唆した。また、誤判定や構造内での分散の取り扱い、構造の判別の総数や距離関数の最適化など、今後の研究で解決すべき複数の課題が明らかとなった。(3)これまでのアルゴリズムを用いて、他の正常例や脳腫瘍例のMRIに適応した。その結果、同様に白質を複数の領域に判別することが可能であった。また、腫瘍例においては、腫瘍部分は白質とは異なった線維方向や拡散係数を持つため、周囲とは異なった様相を示し、正常組織との区別が可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度では、画像処理の前段階処理について一定の結果を得た。続く白質構造解析についても目処が立ったものの、複数の解決すべき課題が残っている。しかしながら、複数のDWIをそのまま解析のための入力として用いることで、これまで用いてきたsingle tensorを想定したアルゴリズムに比べ、より詳細に白質構造解析の違いを判別するが可能であることが示された。これにより、やや遅延を認めるものの、研究の目標とするアルゴリズム及びアプリケーション開発は継続しうるものと考えている。一方、正常脳データベースのための撮影は、施設の整備の遅れなどが影響し、予定に比べ開始が遅れている。しかし現在、施設および体制の整備が整い、間もなく撮影が開始できる状態となった。また、腫瘍例については、附属病院において多軸DWIによるデータ収集は継続されて行われており、アルゴリズム・アプリケーションの準備が整い次第、解析を開始できる状態である。以上より、現在の遅延による最終目標に対する影響は少なく、研究継続可能な範囲であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで同様、正常例、腫瘍例の解析を行いながら、現在明らかとなっているいくつかの課題に対して、白質構造同定のアルゴリズム・アプリケーションの改良を行っていくことが中心課題となる。改良を行った後、正常例、腫瘍例それぞれ20例程度を目安に用いてアルゴリズム・アプリケーションの最適化を行い、続くそれぞれ10例程度に対して適応する。その結果を評価・検証し、特許申請・学会誌発表の可否を検討する。そのためのデータ収集については、当該年度で行えなかった正常例のデータ収集を近々開始する。そのための予算が前年度より繰り越されている。腫瘍例については、これまで同様に附属病院においてデータの収集を継続して進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度で行えなかった正常例のデータ収集を開始するため、前年度より繰り越されている予算も合わせて、撮影の対象への謝金および解析補助のための費用にあてる。解析用の環境は整っているが、そのソフトウェアの更新費用が必要となる。独立したアプリケーションを開発するためのソフトウェアおよび計算ライブラリの購入を予定している。国際学会並びに国内の学会への参加を予定している。アルゴリズムの開発が済み次第、特許の申請を予定している。それに引き続き、国際誌への結果の発表を予定しているため、申請・英文校正・投稿など、その諸費用への拠出を計画している。
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