研究課題/領域番号 |
23591749
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松下 明 筑波大学, サイバニクス研究コア, 助教 (80532481)
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キーワード | 拡散テンソル画像 / 標準脳 / 脳腫瘍 / 浸潤 / 圧迫 |
研究概要 |
当該年度では、Diffusion tensor image (DTI)を用いた脳内の領域マッチングを正確に行うための解析方法の構築を中心に行った。この解析において最も大きな障害は、解析範囲が大きいこと(時間的問題)、解析範囲の多様性(多重比較やマッチングエラーの増大)であった。 昨年度に開発した因子分析を用いたbrain-maskの手法は解析範囲の絞り込みに一定の効果を認めたが、今年度はこれに加えて、既存のSPMによる標準化と灰白質・白質・髄液領域の存在確率テンプレートを用いることで2つの利点を得た。1つは、標準マップにより脳内構造の大まかな位置の予測が可能な点、もう1つは、SPMのテンプレートとの比較により腫瘍などによる異常信号領域が大まかに絞られた点である。これにより、パターンマッチングの際の事前確率として、抽出しようとする領域(例えば視床など)の位置による存在確率を使用することができ、DTI情報を用いたパターンマッチングの精度・計算速度が向上した。また、異常信号を呈する領域の分析においても、その位置から、含まれるあるいは隣接する組織を絞り込むことで、マッチング対象とするパターンが減少したため、計算精度・速度に効果が見られた。 現在のところ、これら得られたマッチングデータを元に、線形のモーフィングを用いて元画像の変形を行い、標準化の処理としている。脳室においても同様のマッチング処理を行うことで、SPMでは位置の乖離が大きかった水頭症例においても、脳室壁の位置の乖離が減少した。 さらに、元画像から線形で補完できる画像と、以上の新しい標準化画像との乖離から、腫瘍が正常組織へ浸潤しているのか、圧迫しているのかの判別を行うことを、当初の目標としている。今年度におけるこの新しい標準化法の確立より、この次のステップへ進むことができるようになったと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度では、最終年度に向けての重要なステップである新しい標準化手法の開発において大きな成果があった。そのため、次の大きな課題である腫瘍周囲での浸潤・圧迫の判別において大きな足がかりができた。これにより、最終の目標とするアルゴリズム及びアプリケーション開発は継続しうるものと考えている。 しかし、ボランティアによる正常例、腫瘍例の撮影がすすんでおらず、アルゴリズムの検証を行うためにもデータ数の確保は必要であり、今後、その点の推進が必要と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
正常例・腫瘍例のMRI撮影を推進する。 また、開発したアルゴリズムの改良と、得られたMRIデータを用いた検証を行い、アプリケーションの開発を行っていくことが中心となる。特に、腫瘍周辺構造の判別に注力する。 また、これまで得られた結果、並びに新しく得られたデータに対する検証結果について、特許申請・学会誌発表を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
正常例・腫瘍例のMRI撮影における謝金、アプリケーションの開発費用、学会・論文での発表、特許出願などにかかる費用
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