最終年度では、これまでに得られたDTIデータを元に、クラスタリングによる領域の選別とマニュアルによる組織の事前確率マップの作成を行った。既存のSPMによる標準化では、灰白質・白質・髄液領域の標準化であるが、それに加えて本法では、DTIデータに基づいた白質領域マッピングを行い、さらに白質領域を非線形に標準化処理を行った。白質領域マッピングは、DTIデータに含まれる拡散の強さと方向を用いて、クラスター分解によるグループ化と、解剖学的位置に基づいた事前確率マップを用いたパターンマッチングによって行った。しかしながら、この変形の正確さの評価方法については、最終的な結論に至っていない。現在までに、標準的なSPMのみによる標準化との差を求めることによって評価を行っている。水頭症例においては、脳室壁の位置の乖離が減少した。また、開発に用いたデータだけでなく、より多くのデータにおいて本法の正確性などの評価を行うため、当初、ボランティア撮影を予定していたが、アメリカにおけるHuman Connectome Projectにおいて、良質のDTIを含めたデータの入手が可能になったため、正常ボランティアの撮影を中止し、そのデータを利用した検証の作業を行っている。 さらに、本法を用いた標準化の後、左右対称性を前提として、白質構造の左右差を画像として表示することで、腫瘍などによる変形の定量を試みた。また、変位によってもマッチングが不可能であった組織構造は破壊されたと仮定し、破壊された構造と圧排された構造を識別するとで、腫瘍による圧排と浸潤との違いを視覚的に示すことを試みた。浸潤、圧排を正確に分離するゴールドスタンダードがない状態であり、正確性などの評価方法がないため、臨床データを用いた検証を重ねていく必要があると考えており、現在の所、臨床データの蓄積を行っている。
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