本研究の目的は、脳内ホスホジエステラーゼ(Phosphodiesterase : PDE)10A(PDE10A)の可視化及びその酵素活性の定量評価が可能なPET/SPET用放射性薬剤を開発し、基礎検討並びに覚醒状態下でのサルPETによる前臨床実験を通し、脳におけるPDE10AのメカニズムやPDE10A阻害剤の薬理効果を解明し、脳疾患の病態との関連性を明らかにすることである。 1年度では、予備実験時撮影された覚醒アカゲザル(n=3)の[^<11>C]MP10-PET(90分間ダイナミック撮影)データ、撮影中経時的に採血した動脈血液データ、PET撮影前に予め取得した脳MRlデータを用い、PDE10Aの阻害剤であるMP10の覚醒サルにおける脳内分布及び動態分析を行った。MRIを参考にPET画像上の前頭葉、尾状核、被殻、小脳に関心領域(ROI)を設定し、各部位における放射能の経時的変化を求めた。そのデータにグラフ解析法を適用し、各ROIの全分布体積(V_T)を推定した。PDE10Aは、特に線条体に多く存在することが知られているが、今回の分析結果は、MP10の脳への取り込みは非特異的なものが多く、明らかな部位差はほとんどなかった。それを元に推定したPDE10Aの濃度を反映するV_Tにも大きな部位差は見られなかった。 2年度では、脳神経精神疾患の小動物モデルや、PDE10A遺伝子欠損マウスにて研究を進めながら、候補化合物の絞り込みについて検討を行った。
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