研究課題/領域番号 |
23591756
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
瀧 淳一 金沢大学, 大学病院, 講師 (10251927)
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研究分担者 |
柴 和弘 金沢大学, 学際科学実験センター, 教授 (40143929)
小川 数馬 金沢大学, 薬学系, 准教授 (30347471)
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キーワード | 心筋虚血 / 心筋梗塞 / メチオニン / マクロファージ / リモデリング / 血管新生 / テネイシンC / 心筋繊維芽細胞 |
研究概要 |
虚血再還流ラット(30分虚血再還流モデル)を用いて、再還流後の心筋におけるC-14-methionineの集積の空間的、経時的変化のデータと、病理組織学的所見との対比検討を行った。 再還流1日後ではメチオニンの集積が低く、病理学的には好中球等の炎症細胞浸潤が始まる時期であった。メチオニン集積は再還流3日後に増加しピークを示し、以後7日、14日、28日と漸減した。このメチオニン集積はTc-99m-MIBIによるarea at riskの内部でかつ心筋viability低下を反映するTl-201の集積低下部におおむね一致しており、心筋viability低下部への集積と判定された。どのような細胞にメチオニンが集積しているかを検討するためにマクロファージに対するCD68抗体と血管新生に関与するmyofibroblastに対する抗αSMA抗体ならびに心筋のマーカーである抗トロポニンI抗体による免疫組織染色を施行し比較した。その結果、再還流3日では心筋細胞間に浸潤したメクロファージが主体で、αSMA陽性のmyofibroblastはほとんど認めなかった。7日ではマクロファージ浸潤が依然として主体であったが、有意にmyofibroblastが出現していた。14日ではマクロファージは減少し、myofibroblastが相対的に増加していた。以上の経過から、虚血再還流による心筋梗塞の亜急性期のメチオニン集積はマクロファージに主に集積していると考えられた。 治療的介入として虚血後の再還流時に、血流の再開、再閉塞を10秒毎に2分間繰り返すPostconditioningを行いメチオニンの集積がどのように変化するかに関する検討を開始した。視覚的な暫定的評価では、梗塞亜急性期のメチオニン集積はPostconditioningで低下していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
methionineの集積機序に関する研究はおおむね順調に進んだ。 Galactro-RGDの合成、作成も進み、I-125による標識は可能となったものの、多核種によるオートラジオグラフィのためのTc-99mまたはIn-111による標識が依然として難しく、問題点として残った。ただしメチオニンの集積が梗塞亜急性期では血管新生ではなく、マクロファージの浸潤を反映していることが判明したため、メチオニンとの直接比較の必要性が低下した。従ってGalactro-RGDの集積分布の検討に関しては優先順位をおとし、今後の課題とした。
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今後の研究の推進方策 |
梗塞後の亜急性期のメチオニン集積がマクロファージへの集積であることが明らかとなったが、これは当初の予想、すなわち脳腫瘍や脳梗塞で示唆されていた血管新生に関連した集積を反映するものである、との認識とは明らかに異なるものであった。従って当初予定していた血管新生マーカーであるRI標識Galactro-RGDとC-14-メチオニンの2核種同時投与実験の重要性が低下した。そこで梗塞後亜急性期のマクロファージ浸潤の程度すなわち間質の炎症性変化の程度、ならびにI-125-抗テネイシンC抗体による間質でのmatricellular蛋白の発現の程度とその後の左室リモデリングの進行との関連に重点をおいた検討を行う予定である。そのために治療的介入を行うことでの各トレーサの梗塞亜急性期での集積変化と長期的な左室リモデリングとがどのように関連して行くかを検討したい。治療的介入としては臨床で実現可能なPostconditioningを採用する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は消耗品の単価の調整の関係で若干の残高を残したが、ほぼ予定どうリに研究に供することができた。次年度は放射性医薬品、ラット、研究発表のための旅費等を中心として研究費を支出してゆく予定である。
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