研究概要 |
虚血再還流ラット(30分虚血再還流モデル)を用いて、再還流後の心筋におけるC-14-methionineの集積の空間的、経時的変化のデータと、病理組織学的所見に関して、治療的介入として虚血後の再還流時に、血流の再開、再閉塞を10秒毎に2分間繰り返すPostconditioning(PC)を行いメチオニンの集積がどのように変化するかに関する検討を行った。 再還流1日後ではPosconの有無にかかわらずメチオニンの集積が低く(正常灌流部に対する虚血部のカウント比:PCなし0.74±0.12 vs PCあり0.78±0.11, P=ns)、病理学的には好中球等の炎症細胞浸潤が始まる時期であった。メチオニン集積は再還流3日後に増加し、ピークを示したがPCにより集積は抑制されなかった(PCなし1.72±0.12 vs PCあり1.64±0.24, P=ns)。しかし7日(PCなし1.44±0.13 vs PCあり1.20±0.21, P<0.05)、14日(PCなし1.25±0.04 vs PCあり1.08±0.09/,P<0.005)、は有意にPCによりメチオニン集積は抑制された。PCの有無にかかわらず病理組織学的には、再還流3日では心筋細胞間に浸潤したメクロファージ(CD68抗体陽性細胞)が主体で、αSMA陽性のmyofibroblastはほとんど認めなかった。7日ではマクロファージ浸潤が依然として主体であったが、有意にmyofibroblastが出現していた。14日ではマクロファージは減少し、特にPCではほとんど認めず、myofibroblastが相対的に増加していた。以前の検討ではメチオニン集積はマクロファージへの集積を反映していることが示されたが、病理組織学的には明確にPCの有無でのマクロファージ浸潤の変化が示されなかった。これはRIイメージングでは定量が簡単にしかも精度よく行えるのに対して、病理組織での全虚血領域にわたるマクロファージ浸潤の定量化が困難なことに起因していると考えられた。将来の生体イメージングを鑑みるとこのイメージングの利点は重要であると思われる。
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