研究概要 |
前年度までにIntravoxel incoherent motion(IVIM)MR画像を用いて肝結節のD,D*およびf値を計測し,肝結節の良悪性診断および質的診断に対する有用性を検討してきた.最終年度には見かけの拡散係数であるapparent diffusion coefficient (ADC)値による評価およびROC解析による診断能評価も追加した. IVIM-MR画像が撮像された患者74例における,悪性肝結節(肝転移:34結節,肝細胞癌:32結節),良性肝結節(肝血管腫:33結節,肝嚢胞:21結節)の120結節を対象とした.IVIM-MR画像は,異なる10個のb値(0, 10, 20, 30, 50, 80, 100, 200, 400, 800 sec/mm2)を用いて,呼吸同期下で撮像された.それぞれの肝結節ごとに,平均D,D*,fおよびADC値を計測し,多重比較した. 悪性肝結節の平均DおよびADC値は良性肝結節の平均D値よりも低値を示した(P<.001).肝血管腫の平均DおよびADC値は肝嚢胞の平均D値よりも低値を示した(P<.001)が,肝転移結節と肝細胞癌結節の平均DおよびADC値に有意差を認めなかった(P = .99).ROC解析による良悪性の診断能については,ADC値に対するAUCは0.98でD値に対するAUCの0.96に比して有意に高値を示し(P = .048),ADC値のカットオフ値を1.40とした場合の感度,特異度はそれぞれ89%,98%であった. 以上より,肝結節の良悪性診断において結節のADC値およびD値を評価することが有用である可能性が示唆された.このことから肝の良悪性結節間では局所の潅流よりは真の分子拡散が異なっている可能性があると考えられる.
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