研究課題/領域番号 |
23591762
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
佐久間 肇 三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (60205797)
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研究分担者 |
北川 覚也 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (50378353)
永田 幹紀 三重大学, 医学部附属病院, 医員 (40402028)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 心筋 / ストレイン / 壁運動 / MRI / 心筋梗塞 / DENSE / SENC |
研究概要 |
拍動する左室や右室の局所心筋ストレインをより高い空間解像度で定量的に評価し、カラーマップ表示できる手法を確立するため、3テスラMRI装置を用いたストレインイメージングに関する研究を実施した。本研究はスウェーデンのLinkoping大学の研究グループと密に連絡をとりながら実施し、高磁場による磁場不均一の影響をうけにくいスパイラル収集をパルス系列に組み込んで研究を実施した。正常ボランティア10名を対象に、DENSE (Displacement encoded imaging with stimulated echo) MRIの撮影を行い、得られた画像を解析して左室心筋16セグメントの内膜側、中層、外膜側における面内方向の心筋ストレインマップを作成し、心筋各領域におけるストレイン正常値を求めた。また、心筋撮影断面に垂直方向のストレインの計測に優れているSENC (Strain encoded) MRIのソフトウエア(Diagnosoft Inc)を購入し、ボランティアを対象に撮影を行って、正常心筋におけるストレインを高い時間解像度で計測できることを示した。SENC法は撮影面に垂直のストレインを時間解像度20ms程度で計測できるため、収縮ストレインだけでなく、拡張期ストレインを高い精度で評価できる点で優れていた。また、SENC MRIとDENSE MRIを組み合わせて実施することにより、左室や右室のストレインをより正確に評価することが可能となる。急性心筋梗塞患者10症例を対象に1.5T装置を用いたDENSE MRIの撮影を行い、得られたDENSE MRIを解析して遅延造影MRIにおける梗塞心筋の範囲と心筋ストレイン異常の分布を比較した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3テスラMRI装置とDENSE法を用いて、左室局所心筋の左室単軸円周方向(circumferential strain)と放射状方向(radial strain)の心筋の伸び縮みをストレインマップとして定量的に表示する研究目標は達成されている。また、3テスラMRI装置にSENC MRIのソフトウエアを導入してボランティアによる撮影を行ったところ、SENC法は撮影面に垂直のストレインを時間解像度20ms程度で評価でき、拡張機能評価に優れていることが示された。このように平成23年度の研究の目的は概ね順調に進展しているが、平成23年11月に導入された新しい3T MRI(3T Ingenia)が最新鋭の装置であるために、ソフトウエアにバグが含まれていることや、遅延造影MRIなどの診療用のソフトウエア環境と、DENSEやSENCなどの研究用のソフトウエア環境が統合されておらず、遅延造影MRIとDENSE MRI・SENC MRIの撮影モードの再起動に15分以上を要した。このため、心筋梗塞患者の撮影にはMRI装置のソフトウエアがすでに安定している1.5T 装置を使用して、遅延造影MRIとDENSE MRIの比較を実施した。新しいIngenia 3T装置のソフト環境も導入後5ヶ月を経て整いつつあり、患者を対象とした遅延造影MRIとDENSE MRIの撮影も平成24年度には実施可能となり、今後の研究計画の実施に問題はない。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続いてDENSE MRIパルス系列と画像解析法を最適化する。ボランティアを対象に心臓超音波画像解析(スペックルトラッキング)によるストレイン評価と、DENSE MRIおよびSENC MRIによるストレイン評価を行い、心筋各セグメントにおけるMRIと超音波による心筋ストレイン正常値を比較する発症7日以内の急性心筋梗塞20症例を対象にDENSE MRIの撮影を行い、心筋壁の内膜側、中層、外膜側の心筋ストレインを定量的に評価する。T2強調MRIから心筋浮腫、安静時心筋血流MRIから微小循環閉塞、遅延造影MRIから心筋梗塞の範囲を求め、心筋ストレイン低下と局所心筋組織障害の程度との関連を明らかにする。発症6ヶ月後にDENSE MRIを再度撮影して心筋収縮機能の回復を評価し、心筋バイアビリティ診断におけるDENSE MRIの有効性を検討する。心不全患者20名、慢性期虚血性心疾患患者20名を対象にDENSE MRIを撮影し、心筋各セグメントにおけるストレインを評価する。さらに、アデノシン負荷-安静時心筋血流MRIから冠血流予備能を定量的に評価し、遅延造影MRIを半定量的に解析して心筋線維化の範囲を求める。心筋壁の内膜側、中層、外膜側の3軸方向の心筋ストレイン異常が心筋血流予備能低下や心筋線維化の分布とどのような関連を有するか解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画に従って、消耗品費(負荷薬剤、造影剤等)に1,012千円、国内旅費(研究打ち合わせ)に80千円、海外旅費(研究打ち合わせおよび成果の発表)に450千円使用する予定である。
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