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2013 年度 実施状況報告書

マルチモダリティーを用いた免疫グリア細胞のイメージング研究

研究課題

研究課題/領域番号 23591766
研究機関兵庫医科大学

研究代表者

今泉 昌男  兵庫医科大学, 医学部, 講師 (60528016)

研究分担者 畑澤 順  大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70198745)
下瀬川 恵久  大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30370258)
キーワードPET / 免疫 / イメージング
研究概要

ミクログリアのPETイメージング製剤として期待されている11C-PBR28において、免疫臨床応用に向けた合成環境整備としてヒトへの投与に関する安全性確認試験が予想以上に早く進める事が可能となり、並行して行っていた最終年度計画も可能となった。11C-PBR28を用いて、臨床用PET/CTで、健常人における全身イメージングを行った。海外では11C-PBR28が結合しない非結合症例(non-binder)が約10%程度存在することが報告されている。遺伝子多型やポルフィリン輸送との関連性等が示唆されているが明らかにされていない。当施設での健常アジア人での11C-PBR28体内分布を解析し、臨床研究や臨床診断に活用するための健常データベース作成を開始した。まず、アジア人種における11C-PBR28のnon-binderの存在と正常体内分布と体内臓器における11C-PBR28放射能濃度の経時的変化について検討を行った。現時点において、健常人8名(年齢:24~40歳、平均年齢29.9±5.6歳)の体内分布測定を施行した。PET装置はGemini GXL(Philip社製)を使用し、吸収補正用のCT撮影後に11C-PBR28 平均296MBqを静注し、直後から頭頂部から鼠径部の範囲を30秒/frame×10~12 positionの撮影条件で1時間に7回施行した。11C-PBR28投与時刻に合わせて時間減衰補正を行い、SUV(standardized uptake value:画像で計測される放射能濃度を投与量と体重で補正した定量値)画像を作成した。各臓器に円形の関心領域を設定し、SUV値の経時的変化を解析した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

11C-PBR28の臨床供給は他施設研究所からの協力もあり、比較的早期に臨床現場での薬剤供給が可能となった。臨床的に必要な供給量は25μA、60分のサイクロトロン照射下において370MBq前後であり、実際には予想より少なかった。改善点として合成に関わる時間の短縮化や比放射能濃度の向上が必要と考えられたが、健常人における臨床評価としては問題ないと判断した。あらかじめ、今まで行った8名の健常日本人の測定では、11C-PBR28のSUV値は投与2分前後で最大となり、脾臓、肺、心筋、膵臓、甲状腺、腸管、腎臓、肝臓の順に高く、骨髄への集積も上昇していた。心筋、肝臓、腸管への集積は投与15分以降も比較的安定していた。脳の最大SUV値は投与10分前後と他臓器に比べて遅く、かつ相対的に低かった。脳内の11C-PBR28は灰白質優位に広く分布しており、活性化ミクログリアに多く発現する中枢性ベンゾジアゼピン受容体(TSPO:translocator protein)の発現が示唆された。また、現時点までに測定した8名の被験者の中にはnon-binderは存在しなかった。

今後の研究の推進方策

健常日本人での全身体内分布計測では、8名の検査の結果、non-binder存在せず、海外の報告に比べてアジア人種でのnon-binderの確率は低い可能性が示唆されるが、今後も健常者の母集団を増やして検討をするべきと考える。また、11C-PBR28の被曝線量算出を目的とした健常人の臓器別投与量の経時的分布については過去に報告があるが、臓器別放射能濃度の推移については今回が初めての検討となる。脳への集積はび漫性であり、参照領域の設定によるトレーサー結合能については評価できない。ミクログリア活性を伴う神経炎症が基礎にあるとされる認知症関連疾患の臨床検査では長時間の拘束と動脈採血による侵襲的定量測定は困難であることや、投与10分をピークに11C-PBR28脳内分布が漸減することから、投与10~20分後のSUV画像を加算平均して評価する方法が現実的と思われる。脳以外の臓器については、心筋や膵臓、脾臓や骨髄などの造血臓器への集積も上昇しており、特に心筋や膵臓では長時間にわたって集積が安定していた。特発性心筋症や自己免疫性膵炎などの炎症関連疾患についても11C-PBR28画像による評価が期待できることが解明された。今後、健常人におけるデータ解析を詳細に検討することにより、疾患をベースにした臨床研究を模索して行く必要がある。海外では既に免疫関連疾患を対象にした基礎・臨床研究が積極的になされ、海外研究者との交流および海外での動向を見据え、さらに臨床応用可能な疾患を対象にした一連の研究を遂行して行く予定であったが、可能であれば次回の研究課題にしたいと考えている。

次年度の研究費の使用計画

研究施設の変更に伴い放射性薬剤合成が困難となったために、他の放射性薬剤との動物を用いた比較実験も行う予定であったが、研究継続が困難となったため。
これらの研究内容を海外でも報告し、海外での研究グループとの交流をさらに深めていく予定である。臨床研究に必要な健常被験者のリクルートを行う必要もあり、これらの準備を進めていく。TSPOイメージングが新たなバイオマーカーになり得るかどうか臨床的に引き続き検証を行う。可能であれば、遺伝子解析データを含めた解析結果を取りまとめ、成果発表を行う。さらに臨床応用がなされると放射性薬剤の合成頻度が増えて、これらにかかる費用が必要となる。TSPOイメージング製剤の合成に必要な薬剤、備品等に研究費が必要と考え、未使用額はその経費に充てる事としたい。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2014 その他

すべて 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] Dynamic whole-body imaging of 18kDa Translocator Protein using C11-PBR28 and 3D-PET/CT2014

    • 著者名/発表者名
      今泉昌男
    • 学会等名
      日本核医学会
    • 発表場所
      大阪
    • 年月日
      20141106-20141108
  • [備考] Clinical impact of "true whole-body" PET/CT

    • URL

      http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=imaizumi-m+kawata

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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