研究課題/領域番号 |
23591767
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
井上 修 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50159969)
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研究分担者 |
阿部 浩司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (80571207)
柳本 和彦 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70531531)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 神経科学 / 放射線 / イメージング / 生理活性 |
研究概要 |
14C-Benzyl acetate(14C-BA)を標識合成し、正常ラットに投与し経時的脳内動態(TAC)を組織摘出法により測定した。その結果14C-BAは投与直後にラット脳に高濃度に移行し、以後どの部位においても単一指数関数的に脳から排泄されることが判明した。以前の実験結果(投与直後に迅速に加水分解されること、フルオロクエン酸でグリア代謝を選択的に阻害すると14C-BAの取り込みが著明に低下すること)を合わせると、14C-BAは脳に移行直後に14C-Acetateに変換され、グリア細胞に選択的に取り込まれた後TCA回路に入り、14C-CO2として脳から排泄されるものと推定された。なお14C-BA投与後の脳からの排泄速度は部位によって異なり、大脳皮質の方が小脳よりも速く排泄されることから、大脳皮質におけるグリア細胞のTCA回路の回転率が大きいことが推定された。一方血液中の放射能濃度は投与直後から急速に低下し、通常のコンパートメントモデルを用いる解析法は適応困難であると判断した。次に、14C-BA投与後早期の時点での脳のオートラジオグラムと後期の時点でのオートラジオグラムとを取得し、2種類の画像を定量的に比較して、脳の各部位における14C-Acetateの生成量並びに脳からの排泄速度定数とを求める簡便法について検討し、大脳皮質及び小脳についてそれぞれの値を推定することができた。また将来のPETによる測定を視野に入れ、11C-CO2を用いる標識合成反応および、分離精製法について検討を開始した。さらにBenzyl acetateが本当にグリア細胞において代謝されることを確認するために13C-BAを用いたMRS法を適用して代謝物の分析、同定を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラット脳における経時的動態の取得、簡便法による Acetateの脳内での生成量、脳からの排泄速度の推定に関しては計画通りに進展した。それに加えてMRS法を適用して代謝物の分析を進め、Benzyl acetateのプローブとしての評価をより詳細に行いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は今年度開発した簡便法(ARG)により算出される、脳内でのAcetateの生成量、脳からの排泄速度定数の生理的意義について検討する。またグルタミン合成酵素阻害モデルや、てんかんモデル等グリア代謝が変化していると予測される病態モデルにおける14C-BAの脳内動態の測定を実施し、プローブとしての有用性を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
14C-Acetate,13C-Acetate等のアイソトープ試薬、その他の試薬、実験動物代等消耗品。情報収集のための旅費。
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