研究課題/領域番号 |
23591767
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
井上 修 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50159969)
|
研究分担者 |
阿部 浩司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (80571207)
柳本 和彦 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70531531)
|
キーワード | Benzyl acetate / glia / protracer / washout rate / developing / status epilepsy |
研究概要 |
昨年度[14C]-benzyl acetate ([14C]-BA)のラット脳からの消失曲線はすべての部位で単一指数関数で近似でき、脳からの排泄速度定位数(k2)がグリア細胞のTCA回路の指標となりうることを示した。また[14C]-BA投与後、早期画像(3分値)と後期画像とを取得することにより、各関心領域におけるk2を簡便に産出できることを示した。今年度は、[14C]-BA投与後のラット脳からの排泄速度がグリア細胞内でのTCA回路により[14C]-acetate から[14C]-CO2へと変換される代謝率を反映しているか否かについて以下の検討を行った。{1-14C]-acetateはTCAサイクルを一回転した後に[14C]-CO2へと代謝されるが、[2-14C]-acetate は少なくとも3回転以上のTCAサイクルを経て[14C]-CO2へと代謝されることから、[2-14C]-acetateの脳からの排泄速度は[1-14C]-acetateト比較して著しく小さいことが予測される。そこでBenzyl-[1-14C]-acetate ([14C]-BA-1)とBenzyl-[2-14C]-acetate ([14C]-BA-2とをそれぞれ標識合成し、ラット脳からの排泄速度を比較した結果、[14C]-BA-2の排泄速度は[14C]-BA-1と比較して著明に小さかった。即ち排泄速度定数(k2)は主に[14C]-CO2の産生率を反映することが支持された。幼若ラットと成熟ラット脳からのk2を比較すると、幼若ラットのk2 葉小さく、グリア細胞のTCAカイロノ発達が十分ではないことが判明した。またてんかんモデルラットノ痙攣発作時におけるk2は正常時ト有意差がなく、[14C]-acetateの脳Uptakeの著明な亢進はGlutamate-Glutamine回路を反映していると推定された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Benzyl-[1-14C]-acetateのラット脳からの排泄速度が[14C]-CO2の産生を反映していることをあきらかにし、さらに幼若ラット脳ではグリア細胞のTCA回路の発達が十分ではないことを示した。また痙攣発作時においても[14C]-CO2への変換率には有意差がなく、Glutamate-glutamine回路が亢進していることが示唆された。[11C]-BAの標識合成および単離生成法は概ね完了した。
|
今後の研究の推進方策 |
臓器摘出法は必要とする動物の数が多いので、PETを適用して、[11C]-BAの有用性について評価を進めたい。その際麻酔の影響を避けるために無麻酔下でのPET測定法を確立する。また[11C]-BAによるグリア細胞におけるCO2の産生率の測定と併せて、13N-ammoniaを用いてglutamate-glutamineサイクルの活性が評価できるか検討したい。 (1) [11C]-BA注射剤の製法の確立 (2) 無麻酔下でのPET(ラット)測定法の確立 (3) モデルラット(グリア代謝抑制、グルタミン合成阻害等)における[11C]-BAの動態測定と解析 (4) モデルラット(グリア代謝抑制、グルタミン合成阻害等)における[13N]-ammoniaの動態測定と解析
|
次年度の研究費の使用計画 |
ラットの固定装置、試薬、動物代等の物品費。 PET測定および解析、資料収集のための旅費。
|