研究課題/領域番号 |
23591770
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
松永 尚文 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40157334)
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研究分担者 |
岡田 宗正 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (70380003)
三浦 俊郎 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00243634)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 2管球CT / 冠動脈CT angiography |
研究概要 |
64列以上のマルチスライスCTを用いた冠動脈CT angiographyは広く臨床応用されているが、冠動脈壁の石灰化が強い症例では、冠動脈内腔が評価できない欠点がある。64列検出器が2対搭載されている時間分解能向上した2管球CTと従来の64列CTの画質などを比較して、時間分解能の向上が、冠動脈CT画像にどのように影響しているかを検討する。2011年4月から2012年3月まで、2管球CT症例のデータを蓄積する。当院では冠動脈CT検査は、2管球CTが主体であるため、single source CTの画像は2009年から2010年の画像を検索し、外付けハードディスクに保存してあるデータを冠動脈の画像解析が可能なworkstationに読み込ませ、画質評価を行う。対象となる2管球CT症例50例、single source CT症例50例を選定する。対象群の年齢や体重などは可能な限り有意差が出ないようにする。また、single source CT時には、70beats/min以下に心拍コントロールするようにβ遮断薬が投与されていたことから、2管球CT対象群の心拍数も70beats/min以下とする。2011年度では、1)冠動脈CTAの画質評価、2)冠動脈検出能の検討、3)高心拍症例におけるdual source CTでの心拍コントロールの必要性の検討、4)single source CTでの静注用短時間作用型ベータ1選択的遮断薬ボーラス投与の効果と安全性の検討を行う。2012年度は5) 石灰化プラークの視覚評価、6)実際の冠動脈CT撮影時の心臓CT検査での被爆量を比較し、静注用短時間作用型ベータ1選択的遮断薬ボーラス投与による影響を検討予定である。これらのデータは随時解析し、学会で発表を行う。2013年度は、これらのデータを最終的に解析し、検定の整合性を評価し、英文雑誌に投稿する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2011年4月から2012年3月まで、2管球CT症例のデータを蓄積し、70beat/min以下の症例を連続で選択しworkstation(ZAIO station)に蓄積している。冠動脈CTAでは再構成時相により画質が異なる可能性があるため、拡張中期で再構成され症例を対象とする。single source CTの画像を、外付けハードディスクに保存してある2009年から2010年の画像を検索し、2管球CTと同じ再構成時相のものを50例選択する。2011年度では、冠動脈CTAの画質評価、冠動脈検出能の検討、高心拍症例におけるdual source CTでの心拍コントロールの必要性の検討は、Jpn J Radiol 2011; 29:316-323にすでに発表し英文化されている。70 beats/min以下の症例では、時間分解の向上した2管球CTは心拍数の比較的高い症例で有効と思われたが、実は低心拍群でより画質の向上に寄与していた。この原因としては、70 beats/min程度の心拍数では、実は64列CTを用いた冠動脈CT検査では、half-reconstructionを用いた撮像では、時間分解能(175msec)が不十分な可能性があることが分かった。 しかし、当院では2管球CTを用いて冠動脈CT検査を行っているため、静注用短時間作用型ベータ1選択的遮断薬を用いて冠動脈CT撮影が行われていない。主として、若年者や女性を中心に静注用短時間作用型ベータ1選択的遮断薬を使用しているため、動脈硬化性疾患を対象とする従来の冠動脈CTの対象群とは異なることから、今後前向きに静注用短時間作用型ベータ1選択的遮断薬使用症例を拡大していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2012年度は、石灰化プラークの視覚評価を行うため、冠動脈石灰化の性状(点状、弧状など)について分類し、冠動脈内腔のCT値を測定し、referenceとして縦隔脂肪のCT値を測定する。冠動脈内腔のCT値を測定時には、平均値と標準偏差値(SD)を求め、signal-to-noise比(SNR)やcontrast-to-noise比(CNR)を計測する。この、SNRやCNRの値から、冠動脈石灰化が冠動脈内腔へ及ぼす影響を比石灰化部の冠動脈のSNRおよびCNRと比較する。今回70beats/min以下の症例を対象としているが、Systolic reconstruction in patients with low heart rate using coronary dual-source CT angiography. Eur J Radiol 2011; 80: 336-341で報告しているが、低心拍症例でも糖尿病や高血圧例では、左室の拡張障害が認められることがあるため、各症例の患者背景(糖尿病、高脂血症、高血圧など)についても、再度検討する必要がある。 心臓CT検査での被爆の軽減については、静注用短時間作用型ベータ1選択的遮断薬を使用し、心拍コントロールすることによりECG-pulsingを用いて心臓CTを撮影することで被曝量が軽減できたか、単一スライス面における吸収線量computed tomography dose index-volume (CTDI-volume) mGyを用いて比較する。
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次年度の研究費の使用計画 |
2012年度以降は、症例を解析し、積極的に学会発表し、得られた成果を広く報告するとともにいろんな角度からの切り口で検討を行い、英文論文に投稿する予定である。
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