研究課題
(1) 51例の早期関節リウマチ症例(発症から5ヶ月以内)の両手MRI(左右各15部位)について,造影MRIを基準とした時の非造影MRIの診断能を比較した。また滑膜炎の滑動性の指標である滑膜の造影効果の速度(e-rate)と診断能の比較も行った。非造影MRIの診断能は滑膜炎に関しては感度77.8%,特異度49.7%,正診率65.3%,骨変化に関しては感度80.7%,特異度99.4%,正診率97.9%であった。非造影MRIにおける滑膜炎の偽陽性の原因として,軽度の滑膜炎と関節液・関節軟骨との区別が困難な点が挙げられる。また偽陰性の関節はe-rateが有意に低く,滑膜炎の活動性が低いことが偽陰性の要因と考えられた。骨変化の評価は非造影MRIでも十分可能であることが示された。(2) 非造影MRIにかわる滑膜炎の評価法として,動脈血スピンラベル法(Arterial spin labeling, ASL)の応用を考案した。これは動脈血に磁気的なラベルをつけることで,ダイナミック造影MRIと同様の血流情報を得る方法で,非造影MRIを用いて脳血流評価を行う方法として注目されている。しかし,中枢神経以外の適応はほとんど報告されていない。ASLを造影MRIの代用として使用可能かどうかを検討するため,ボランティアによる撮像を行い,撮像条件の設定を行った。手根関節からMP関節をカバーする範囲(撮像視野18cm)で4mm厚の横断像を撮像した(撮像時間約5分)。動脈ラベル負荷後の遅延時間(1,2,3秒)を変化させることで,手の筋肉の信号が変化することがわかり,筋血流を反映していた信号が得られることを確認した。今後はこの方法を臨床例に用い,滑膜炎の評価を造影MRIと比較する予定である。
3: やや遅れている
非造影MRIの診断能の評価は達成したが,非造影MRIにおける滑膜炎の評価法における新たな撮像法考案に予想以上の時間をとった。ASLによる滑膜血流評価のめどがついたばかりで,臨床例による検討がまだ十分でない。
本年度の研究でASLの撮像条件を決定できたので,引き続き臨床例を用いた研究を行う。まず,診断の確定した関節リウマチ症例について,ダイナミック造影MRIとASLの両者を行い,ASLによる滑膜炎の血流評価の可能性について研究を行い,非造影MRIによる滑膜炎の活動性評価が臨床的に応用可能かどうかを検討する。
ASLの四肢関節の応用はいままでに報告されたことがなく,この初期経験を中心にして学会発表と論文作成を行う。研究費はこれにかかる研究データの集積と分析,学会の出張旅費,論文の英語校正に使用する予定である。
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