研究課題
前年度までの研究で早期関節リウマチ(RA)症例の両手MRIについて,造影MRIを基準とした時の非造影MRIの診断能を評価し,滑膜炎の評価は不十分であるが,骨変化の評価は非造影MRIでも十分可能であることが示された。MRIにおける骨変化は骨髄の炎症性変化(骨炎)を反映しており,RAにおける活動性に相関し,予後予測の重要な因子であることがわかってきている。すなわち,非造影MRIでも骨炎に注目することにより,RAの活動性評価と予後判定が可能である。しかしながら,きわめて早期のいわゆる診断未確定関節炎(ndifferntiated arthritis, UA)における,MRIの位置付けは明確にされていない。非造影MRIの臨床的役割を,1) 早期診断,2) 早期治療効果判定との関連について評価を行った。1) 早期診断;早期関節炎200名について,ACR/EULARの2010 RA分類基準に非造影MRIで認められる骨変化(骨髄浮腫)を加えることによる診断能の違いを評価した。非造影MRIの所見を加えることで,感度59.8→74.4%,特異度80.7→90.4%,診断確度68.5→ 84.0%と有意に向上した。2) 早期治療との関連:MRIにおける骨髄浮腫陽性および自己抗体(RA 因子または抗CCP抗体)陽性の早期関節炎13例について,DMARDsおよびMTXによる治療を行い,6ヶ月毎に手関節のX線所見および非造影MRIにおける骨髄浮腫の変化(RAMRISスコア)を前向きに観察した。12ヶ月でX線スコアの進行がなかったものは9例で,このうち8例では骨髄浮腫スコアが33%以下に減少していた。これに対して,X線スコアの進行した4例では骨髄浮腫スコアの減少が見られなかった。
3: やや遅れている
1) ACR/EULARの2010 RA分類基準に非造影MRIでにおける骨変化(骨髄浮腫)を加えることで,早期RAの診断能が有意に向上することが明らかとなった。早期治療における治療との関連についても,骨髄浮腫が治療効果判定と予後予測に有用であることが示唆されたが,前向きに評価できた症例が13例と少ないこと,観察期間が1年に限られていることが限界としてあげられる。今後は後ろ向きの症例も含めて,症例数を増やす必要がある。2)動脈血スピンラベル法(Arterial spin labeling, ASL)における滑膜の血流評価ついては,臨床例における検討を行っているが,画像ノイズが多く,造影MRIとの比較がうまく行えなかった。
早期RAの臨床的有用性を明確にすること,これにより早期RAの診断および治療方針において非造影MRIが標準的な検査になりうることを明らかにする。経過観察症例だけでは症例数に限界があり,過去の症例を後ろ向きに分析し症例を増やしているところである。ASLは画像ノイズが多く,分析が困難であった。ソフトウェアの更新を行い,適切な撮像条件を再度検討したい。
MRI撮像のためのソフトウウェア更新,データ収集と解析,論文作成のためのコンピュータおよびソフト,資料購入,学会発表のための旅費等の経費に使用する予定である。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件)
Mod Rheumatol
巻: 23 ページ: 254-259
10.1007/s10165-012-0646-5
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