研究課題/領域番号 |
23591784
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研究機関 | 群馬県立県民健康科学大学 |
研究代表者 |
長島 宏幸 群馬県立県民健康科学大学, 診療放射線学部, 講師 (60352621)
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キーワード | 急性期脳梗塞 / MRI / 拡散強調画像 / 見かけの拡散係数画像 / 画像表示 / 統一化 / システム開発 / 濃度ヒストグラム解析 |
研究概要 |
脳梗塞の急性期におけるMRI装置を用いた画像診断では,主に拡散強調画像(DWI)および見かけの拡散係数画像(ADC map)が有効に活用されている.しかし,DWIおよびADC map上の脳虚血領域の程度および範囲は,表示画像のウィンドウ調節によって大きく変化するため,存在診断や範囲判定の精度低下につながる. ASIST-Japanと呼ばれる研究グループは,DWIと同時撮像される画像(b0画像)を利用して,DWIの表示条件を標準化する方法を考案した.われわれは,先行研究として,ASIST-Japanによって考案された方法を自動化したシステム,および新たな表示階調の自動調節システムを開発した.研究調査において,DWIとb0画像を画像サーバ等に転送する際,b0画像のみを圧縮して転送するシステムがあることがわかった.ASIST-Japanの考案方法やわれわれの先行研究方法は,b0画像を利用してDWIの表示階調を調節しており,両画像が同一な階調数でない場合には利用できない.さらに,DWIとともに急性期脳梗塞の画像診断に利用されているADC mapに関する画像表示法の推奨や基準については,これまで全く提唱されていない. そこで,昨年度,急性期脳梗塞のDWIおよびb0画像からなる60症例の画像データベースを構築し,ASIST-Japanにより考案された方法を実際に試み,さらに,b0画像を利用せずにDWIの表示階調を自動調節できる方法を考案した. 本年度は,ASIST-Japan法と本システムにより調節されたDWIに対し画像評価を実施して,本システムの精度を検証した.さらに,構築した画像データベースからADC mapを作成し,昨年度考案したDWIの自動調節法の応用により得られたADC mapと,2名の医師の観察の下で表示階調が調節されたADC mapの画像評価を実施して,比較検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
下記した,平成24年度における研究計画および実施内容から,本研究の達成度を「当初の計画以上に進展している.」と評価した. 1,ASIST-Japan法と本システムにより調節されたそれぞれのDWIに対して,画像評価を行って比較検討し,本システムの精度を検証する.→各方法により調節されたDWIの症例間における信号強度および画像コントラストの主観的類似性を2肢強制選択法を実施して評価した結果,本システムを用いて調節されたDWIの選択率は75.1%であり,ASIST-Japan法と比べて高い値を示した. 2,平成23年度に構築した画像データベースを用いてADC mapを作成する.→急性期脳梗塞の画像所見が含まれるDWIおよびb0画像からなる44例の画像データベースを用いて,まず,両画像ともに全スライス像を合成して3次元画像を作成し,しきい値処理を適用して3次元DWIを2値化した.その後,明らかに雑音と思われる候補を除去して脳実質部を抽出した.そして,DWIとb0画像の脳実質部の各ボクセル値に基づいて3次元ADC mapを作成した. 3,MRI検査に従事する医師2名にADC mapを観察していただいて表示条件(WW・WL)を設定していただく.→2名の脳神経外科医のコンセンサスの下,44症例のADC mapを用いて手動により表示条件を調節していただいた.その後,決定された表示条件を利用して,3次元ADC mapの階調を変換した. 4,医師により調節されたADC mapと考案した方法により調節されたADC mapに対し画像評価を実施して比較検討する.→昨年度考案したDWIの自動調節法をADC mapにも応用して調節し,医師によって手動で調節されたADC mapと2肢強制選択法を用いて比較評価した結果,自動調節されたADC mapの症例間における主観的類似性は極めて向上した.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究計画は以下のとおりである. 1)作成したADC mapを用いて,新規性のある表示階調自動統一化法を考案する. 2)平成24年度に医師によって表示条件が設定されたADC mapと,考案した本システムにより自動設定されたADC mapに対し,目視による視覚的評価,および画質評価値を用いた定量的評価を行い比較検討して,本システムの精度を検証する. なお,本研究は,基本的に研究代表者のみで行うが,研究が計画どおりに進まない時には,関連医療機関の画像診断部局に所属する医療スタッフや,研究代表者が所属する群馬県立県民健康科学大学で卒業研究指導をしている学部生に協力を依頼する.また,本研究を遂行する上で有益な結果が得られた時には,関連する学会に報告し,他者からの意見をいただく.
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次年度の研究費の使用計画 |
・書籍の購入: 本研究を遂行するにあたり,MRIおよび医用画像工学等の関連する分野の情報収集と知識習得のために,書籍を購入する予定でいる. ・研究への協力者に係る謝金の支出: 本研究では,次年度,開発したシステムの精度検証を目的に,医師によって表示条件が設定されたADC mapと,本研究で考案したシステムにより自動設定されたADC mapを用いて,目視による視覚的評価のための画像観察を計画しており,協力者に対して謝金を支出する予定でいる. ・国内・外国の関連学会への報告(口述および展示発表)および論文投稿:研究により得られた有益な結果を社会・国民に発信するため,日本のみならず欧米の関連学会に報告および論文を投稿する予定でいる.なお,論文投稿に関して投稿費および別冊費が必要となる場合がある.また,英文雑誌への論文投稿では英文校正費も必要となる.
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