これまでの研究では,ASIST-Japanと呼ばれる研究グループによって考案された,拡散強調画像(DWI)の表示条件を調節する方法を改善するため,DWIと同時撮像される画像(b0画像)を使用することなくDWIを適正表示するための自動調節システムを開発した.その結果,本システムを用いて調節されたDWIの症例間における視覚的な主観的類似性は,ASIST-Japan法と比較して有意に向上した.また,DWIとともに急性期脳梗塞の画像診断や治療適応の決定に利用されている,見かけの拡散係数画像(ADC map)の表示条件の標準化に関する研究が,今まで報告されていないことから,先行研究で考案したDWIの自動調節法を応用した,ADC mapにおける表示条件の自動調節システムも開発した.その結果,自動調節されたADC mapの症例間における主観的類似性は,医師によって手動で調節されたADC mapと比較して,極めて向上した. そこで,本研究では,先行研究で開発した手法とは異なる新たなADC mapの表示階調自動統一化法を考案した.医師および本自動システムによって調節されたADC mapの濃度ヒストグラムから症例間の相互相関値を定量的に求めた結果,医師による手動方法ではそれぞれ平均0.572,0.751であったのに対し,本自動システムでは0.900,0.936であった.この結果は,本自動システムを用いることにより,症例間で統一化された画像表示が可能であることを示している. したがって,研究期間全体を通じて開発した自動調節システムは,DWIおよびADC mapの最適な画像表示を正確且つ迅速に行えることから有望な技術であり,アーチファクトによる不正確な判断の防止や虚血領域の判定誤差の減少,治療法の適切な判断の達成が可能となることから,放射線科医や脳神経外科医にとって有用であると考える.
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