研究課題/領域番号 |
23591788
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
田岡 俊昭 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (30305734)
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研究分担者 |
吉川 公彦 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (10161506)
坂本 雅彦 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (60592194)
岸本 年史 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (60201456)
木内 邦明 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20398449)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / 拡散テンソル画像 |
研究概要 |
これまでの研究で、拡散テンソル画像の解析により、アルツハイマー病では重症度に応じて、鉤状束および帯状束の拡散異方性の低下、拡散能の上昇がみられることを確認できた。本年度は今までの測定に加えて、のべ100検査のテンソルトラクトグラフィーを施行し、データの蓄積を行っている。また、平行して、この拡散テンソルの概念を一歩進めたq-space imagigでの鈎状束、後部帯状回の解析も行っている。q-space imaging(QSI)は、複数の異なる強度のMPGを印加した一連の拡散強調像から得られる信号減衰曲線から、スピン変位の確率分布を得る手法である。アルツハイマー病(AD)症例でQSIを行い、鈎状束、後部帯状束について、0偏位確率密度(0MaxProb)、確率分布の半値全幅変位(dFWHM)、軸平均拡散尖度(mAKC)を算出し、対象例と比較検討した。対象はAD群6例、対照群6例である。両側の鉤状束、後部帯状束と考えられる線維路をVOLUME-ONEおよび dTV. FZRを用いて作成し、0MaxProb、dFWHM、mAKCを算出した。これらの係数をAD群と対照群で比較検討した。AD症例では0MaxProbが鈎状束で左3.06%、右3.18%、後部帯状束で左3.29%、右3.31%と、いずれも対照群より有意に低値となった。dFWHMは鈎状束で左12.2μm、右11.8μm、後部帯状束で左11.6μm、右11.6μmと、左後部帯状束を除き対照群より有意に高値となった。mAKCはAD群の鈎状束で左0.55、右0.58、後部帯状束で左0.61、右0.61と、いずれも対照群より有意に低値となった。AD症例では、対照群と比較して、辺縁系回路の神経束の0MaxProbは低下、dFWHMは拡大、mAKCは低下を示した。神経線維の脱落などのADに関連した変化を反映したものと推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究で、拡散テンソル画像の解析により、アルツハイマー病では重症度に応じて、鉤状束および帯状束の拡散異方性の低下、拡散能の上昇がみられることを確認できた。本年度は今までの測定に加えて、のべ100検査のテンソルトラクトグラフィーを施行し、データの蓄積を行っている。また、平行して行っているQSIでの検討については、すでに日本神経放射線学会での報告を行った。
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今後の研究の推進方策 |
二年以上にわたる臨床所見、心理テストの所見の経緯が追跡できている症例に関して、正常群、MCIからアルツハイマー病に移行した群、MCIで安定していた群、軽度のアルツハイマー群に分けての検討を行う。さらに、MCI症例ですでに抗認知症薬を投与されている症例に関して、症状の進行が抑えられた群、症状の進行が抑えられなかった群に関しても検討する。これらの症例で、tract-based-analysisにより得られた、対象とする線維路の拡散異方性、拡散能のデータの組み合わせから、サポートベクトルマシン(SVM)による上記の各群間の判別を行う。SVMは代表的なフリーソフトであるSVM-Lightを用いる。SVM-LightはLinux上で働くソフトであり、Cornell大学のJoachims氏からフリーウェアとして提供されている。上記の各群のデータを用いて、同ソフトの「学習モジュール」により識別のための学習モデルを作成し、各群間の識別のための分離平面を得る。この分離平面から、同ソフトの「識別モジュール」により、個々の症例での拡散テンソルデータが、上記各群のいずれに属するかを決定する。上記のSVMによる判別の妥当性を検証する目的で、ROC解析を行うとともに、感度、特異性、正確度に関しての検証を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
解析ソフトの違いによる測定値の変化を検討する目的で、Dti Studio、nordicICE 、FMRIB’s Software Libraryといった、複数のソフトウェアによる解析も併用する予定であるが、一部は有料ソフトウェアであり、その購入費用に当てる。また、研究成果の報告を、国際磁気共鳴医学会(ISMRM)や北米放射線学会で行う予定であり、その旅費等に当てる。
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