研究課題/領域番号 |
23591788
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
田岡 俊昭 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (30305734)
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研究分担者 |
吉川 公彦 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (10161506)
坂本 雅彦 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (60592194)
岸本 年史 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (60201456)
木内 邦明 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20398449)
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キーワード | アルツハイマー病 / MRI / 拡散テンソル |
研究概要 |
鈎状束の拡散異方性(FA)および拡散能(ADC)によるアルツハイマー病の予後予測が可能かどうかを検討する目的で、本年度は、2年以上の経過観察ができたアルツハイマー病・軽度認知障害の症例に関して、鈎状束のFAおよびADC、とMMSEスコアの変化の相関を検討した。 対象は臨床的にアルツハイマー病または軽度認知障害が疑われ、年一度の拡散テンソル画像およびMMSE測定が症例29例(2年間20例、3年間9例)である。拡散テンソル画像から、両側鉤状束と考えられる線維路を拡散テンソル解析ソフト(dTV. SR)を用いて解析し、FA値とADC値とMMSEスコアとの相関を検討した。検討した項目は1) FA値・ADC値と同時期のMMSEの相関、2) FA値・ADC値と翌年のMMSEの相関、3) FA値・ADC値の年間変化(ΔFA、ΔADC)と同時期のMMSEの年間変化(ΔMMSE)の相関、 1) FA値は同時期のMMSEと正の相関(相関係数r=0.26)を示した。ADC値はMMSEと負の相関(r=-0.30)を示した。2) FA値は翌年のMMSEと正の相関(r=0.32)を示した。ADC値はMMSEと負の相関(r=-0.29)を示した。3)ΔFAと同時期のΔMMSEでは統計学的に有意な相関はなかった(r=0.35)。ΔADCと同時期のΔMMSEでは有意な相関はなかった(r=0.14)。4)ΔFAと翌年のΔMMSEでは有意な相関はなかった(r=-0.06)。ΔADCと翌年のΔMMSEでは有意な相関はなかった(r=-0.07)。 FA値・ADC値は以前の報告と同様に、同時期のMMSEスコアと相関した。今回の検討では、翌年のMMSEとも相関することが示され、予後予測に応用可能と考えられた。一方、FA値・ADC値の年間変化については予後予測への応用は困難と思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
症例の蓄積は進んでおり、今までにのべ700例を超える症例の撮像を行った。Brain Res誌に現時点での結果を報告し、すでに電子出版されている。 Longitudinal white matter changes in Alzheimer's disease: A tractography-based analysis study. Kitamura S, Kiuchi K, Taoka T, Hashimoto K, Ueda S, Yasuno F, Morikawa M, Kichikawa K, Kishimoto T. Brain Res. 2013 Apr 10. pii: S0006-8993(13)00493-9. doi: 10.1016/j.brainres.2013.03.052. [Epub ahead of print] 本論文では、アルツハイマー病の予後と鈎状束、下縦束、下後頭前頭束の拡散違法性が関連しているとするものである。 現在、客観性を高めるためにフリーウェアである自動化ソフトによる解析を試みているが、技術的問題を克服できずにいるところである。
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今後の研究の推進方策 |
症例の蓄積を引き続き進める。特に経過観察の症例を多く確保することに努める。縦断的研究であり、撮像の質を経時的にも保ち続けることが重要であるが、それに関しては、使用するMRI装置を固定し、ソフトも同一のものを使い続け、撮像条件を一定のものとすることで担保してきた。これからもその努力を続ける。 解析のソフトに関して、重大な技術的困難に直面している。これに関しては、操作の容易なソフトの購入を検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述のフリーウェアの自動解析ソフトによる解析が技術的困難に直面しており、より操作の容易なソフトの購入を検討している。 資料の購入、発表のための旅費、論文作成のための経費にも研究費を使用していきたい。
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