研究概要 |
1. 独自に開発したT1強調3次元撮像法を用い、中大脳動脈領域の非心原性急性期脳梗塞患者40名を対象に、1.5 Tesla MRIおよび3 Tesla MRIによる3次元血管壁イメージングおよびMR血管造影(MRA)を撮像した。1.5 Teslaによる検討では、MRAにて責任血管に有意狭窄を認めないにも関わらず、血管壁イメージングにてほぼ全例で両側中大脳動脈近位部(M1)にプラークと考えられる壁肥厚を認めた。プラークの正常白質に対するコントラスト比は、責任血管(中央値50.0%)において健側血管(中央値44.9%)と比し有意に高信号を呈しており(p=0.02, Wilcoxon test)、脆弱プラーク(脂質・出血主体)を示唆していると考えられた。3 Teslaによる検討でも同様の傾向を認め(患側52.8%, 健側42.6%, p=0.001,Wilcoxon test)、更にアテローム血栓性脳梗塞においてラクナ梗塞に比し有意に高信号を呈していた(p=0.02, Mann-Whitney test)。プラークの造影効果は患側・健側ともに認められ、脆弱プラークの指標としては不十分と考えられた。本成果によって、非心原性脳梗塞の責任病変となりうる頭蓋内動脈硬化性病変の質的診断が脳卒中イベントや病型の予測に有望であることが示唆された。 2. 急性期脳動脈解離疑い患者16例を対象に、1.5 Tesla MRIによる3次元血管壁イメージング、および従来の推奨撮像法(MRA, BPAS, T1強調画像)を経時的に撮像した。3次元血管壁イメージングは従来の撮像法に比し解離の存在診断・質的診断を正確かつ短時間に行うことが可能であった。さらに、壁内血腫の信号変化を検出することも可能であった。本成果によって、本手法が脳動脈解離の診断法・経過観察法として有効であることが明らかになった。
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