研究課題/領域番号 |
23591790
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
佐々木 敏秋 岩手医科大学, 医学部, 主任技術員 (20438500)
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研究分担者 |
世良 耕一郎 岩手医科大学, 医学部, 教授 (00230855)
寺崎 一典 岩手医科大学, 医学部, 講師 (60285632)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | PET / 性能評価 / 施設間校正 / 定量性 |
研究概要 |
本研究の目的は(1)PET性能評価試験の短縮研究 (2)PET装置性能評価の項目,試験回数の検討 (3)PET定量値評価ファントムの作成からなる. (1)の短縮研究においては,NEMA IECBODYファントムにおける線源調製の時間短縮の方法と「がんFDG撮像法ガイドライン」の線源調整法と推奨法が異なることによるデータの違いを検討した. 時間短縮法に関してはファントムへのホット球の乾燥していない場合においてのRIの入れ替え回数を検討した. その結果直径10mm球では:2回,13mm:2回,17mm:1回,22-37mm:0回のRI溶液をを入れ替えることで球の濃度が希釈されず6個の球全体が誤差1%以内になると確認された. これは通常球の線源調整を行う場合は球以外のファントム全体にRIが封入されているため多くの被ばくを伴う. 実験精度を上げるため入れ替え回数は多くする必要があるがむやみに回数を増やすと被ばく量が多くなる. そこで回数を特定することで線源調製に係わる時間と被ばく量を軽減できた. 次にがんFDG撮像法ガイドラインの線源推奨値(BG比4.00倍)と推奨実験法(BG比4.08倍)の値の違いがPET性能評価の結果に及ぼす影響について検討した.臨床条件のデータ収集では,推奨実験法で10mm球を確認できたが線源推奨値では確認されない事例も見られた. 30分のデータ収集では10mm球は両者とも確認された. 37mm球を1.0とした場合, 推奨実験法では0.40-0.50倍, 線源推奨値では0.36-0.49倍の値となった. 結果両者の値に有意差は無かった.結論としてBGとホット球の濃度差は視認性に影響を与えるが部分容積効果の評価には影響を与えないことが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)PET性能評価試験の短縮法の研究において,我々はNEMAファントムを用い,定期的にPET性能評価を行ってきた.実験を通じて多施設で実験を幅広く利用できるようにするために, PET性能評価法の測定順と測定基準を変更し,最適な条件の検討を行った.このことでFDG_185 MBq以内,5-6時間以内にPET性能評価試験を線源調整も含め終了する方法を確立した.さらにPET性能評価実験の時間短縮と精度と高めるために実施した「PET測定用ファントムが乾燥していない場合の線源調製」では, ファントムに多くの線量が封入されている中での調整が必要となるため, その線源調時間は被ばく量に比例する. そのため実験方法を具体的に示した本法は必要な実験の精度を高めるともに被ばくの減少にも効果があると考えられる.また「異なるファントム基準濃度がPET評価に与える影響」において,線源調整の球の濃度と周囲の濃度差は3.95-4.05倍である.「がんFDG撮像法ガイドライン」の基準は4.0倍と定めているが「がんFDG撮像法ガイドライン」の実験推奨法ではおよそ4.08倍となる. およそというのはNEMA IEC BODYファントムの種類により全体の容量が異なり特定出来ないためである. この違いによるPETの性能評価の影響を調べた. その結果両者では有意差なしという結論となった. またNEMAの基準に基づく性能評価試験をも合わせて行うが通常, 測定条件をNEMAに準拠させるための条件設定が困難となっている. これは継続中である.2)NEMAファントム評価を目的としたプログラム作成 PET性能評価を効率的に行うには,PET性能評価の基準変更,解析のためのプログラム開発が必要である.すでに数類作成しており,それらに変更を加える.これらはほぼ達成出来ている.
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今後の研究の推進方策 |
今後はFDGSCAN注を使用し各PET施設でPETの簡易的性能評価実験を行い,SUV等の半定量値をそれぞれの施設で計算することで校正値とする.施設ごとに単独で実験するよりも実験者が立ちあうことで実験の方法と精度が高く維持されるため施設間の誤差が生じにくい. また密封線源を使用しての定量法を検討している.そのことでより施設間校正の精度が高まると期待される.通常施設間校正のための線源として18F-FDGが多く使用される. しかし半減期109分の18Fを使用しているため, サイクロトロンを持たないPET施設ではPET性能評価とともに定量値の施設間校正も困難な状況にある. その解決の方法として22Naを用いた密封線源の使用があげられる.22Naを用いてNEMA規格のすべてのPET性能評価項目を網羅することは艱難であるが, 物理的な空間分解能, 感度は可能となる. そのことでFDGを使用した線源調製部分が減少するため, より施設間校正の精度が高まると予測される. 問題点としてNa密封線源は空間分解能用としては線源が強く(1MBq)PET性能評価試験を実施する場合にどのような影響があるかを検討する必要がある. また18Fと22Naのベータ線のエネルギーの違いも影響しうるため,十分な検討が必要である.
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次年度の研究費の使用計画 |
施設間校正の一つの問題点としてPETデータのアウトプット他のコンピュータへのインプット煩雑さがあげられる. ほとんどのPET装置はデータのアウトプットはDICOMファイルである. 解析用のソフトウェアがDICOMに対応している場合は大きな問題にならないが, 時にはそのソフトトウェア用にデータフォーマットを変換する必要がある.その時にデータの変換が起こっているかどうかは注意する必要があり, その為のコンピュータが必要となる. 多施設間でファントムを使用する頻度が高くなると性能評価試験の日程が込み合うため他の施設で同時に使えない可能性も出てくる.そこで購入を検討する. 本来施設間校正は同じファントムをそれぞれのPET施設が測定すれば修了する.しかしそれは不可能であるため, 現状では18F-FDG溶液を調整し, さらに密封線源を使用し, 来るだけ実態に即した施設間校正するのが望ましいと考えられる.
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