研究課題/領域番号 |
23591791
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 英一 岩手医科大学, 共通教育センター, 教授 (90154038)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | X線CTシステム / エネルギー弁別 / フォトンカウンティング / CdTe検出器 / ISO-MPPC検出器 / 高速電荷有感式増幅器 / 高速整形増幅器 / 高速コンパレーター |
研究概要 |
(1)Sub-McpsのCdTe検出器システムを購入し,開発した高速整形増幅器と高速反転コンパレーターを接続し,X線フォトンを高速でカウントした。(2)1×1×1 mmのLSO単結晶をMPPCに貼り付け,アルミキャップで遮光する方式のLSO-MPPC検出器を製作した。次いで,高速電荷有感式増幅器,高速整形増幅器,超高速コンパレーターを開発し,最大6 Mcpsでカウントした。(3)上記2種のエネルギー弁別X線検出器システムを単軸ロボットに搭載して振動させる方式のライン検出器を開発した。LSO-MPPCとCdTe検出器の最大スキャン速度はそれぞれ600 mm/sと25 mm/sであった。(4)CdTeライン検出器,ターンテーブル,PCなどを組み合わせて,エネルギー弁別X線CTシステムを構築した。被写体のプロジェクションデータはライン検出器により得られ,被写体のスキャンと回転を繰り返すことによりCT撮影を行った。またヨウ素とガドリニウムの造影剤を使ったKエッジ撮影では,良好な画像コントラストが得られた。(5)LSO-MPPCライン検出器,ターンテーブル,PCなどを組み合わせてエネルギー弁別可能な高速フォトンカウンティングX線CTシステムを構築した。コンパレーターの下限電圧を変化させることにより,画像のコントラストが変わり,ヨウ素やガドリニウムのKエッジ撮影と同等の断層像が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)静岡大学のベンチャー企業が開発したSub-McpsのCdTe検出器システムを購入し,その他の増幅器などを全て手作りして,高速CdTeライン検出器を構築した。高速MCAを使ってエネルギーレベルと幅を調整する予定だったが,高価な高速MCAを購入できなかったため,コンパレーターを用いたエネルギー弁別X線CT(ED-CT)システムを開発することにした。ED-CDにおいて,エネルギーの下限はコンパレーター下限電圧で決定され,上限は管電圧に対応させた。次いで,下限電圧を変えて撮影し,エネルギーサブトラクション法によりエネルギー幅を決定することもできた。撮影ではシグマ光機のxステージを用いたので,最大スキャン速度は25 mm/sであったが,高速単軸ロボットを使った場合には100 mm/s程度の速度まで増加できる。また新しい高速CdTe検出器システムも開発中である。(2)フォトンカウンティングX線CT(PC-CT)システムの基礎研究では,当初LSO単結晶とMPPCモジュールを利用した。モジュールを最大スキャン速度600 mm/sで振動させてPC-CT撮影を行った。LSOを使った場合の最大レートは6Mcpsであったが,ZnOを使った場合には15 Mcpsまで増すことができた。モジュールに内蔵したコンパレーターを用いた場合,下限電圧の変化によりコントラストが若干変化した。次いで,モジュールからの出力を積分し,開発したコンパレーターに入力することにより,顕著なコントラストの変化が見られた。これらの結果をふまえて,LSO-MPPC検出器,高速電荷有感式増幅器,高速整形増幅器,超高速コンパレーターなどを用いたPC-CTシステムも開発して,現在基礎データを収集中である。これらの研究成果は10編以上の論文としてすでに掲載されている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の計画に従って研究を実施し,ほぼ予定通りの成果を得ることができた。したがって24年度は申請当初の計画通りに研究を実施する。(1)反射式X線カメラの構成: 蛍光X線分析用小型・軽量X線発生装置のX線管ユニットをx-yステージに固定して被写体をスキャンする方式の反射式(後方散乱)X線カメラを開発する。CdTe検出器をX線管ユニットに取り付け連動させることにより後方散乱イメージングを行う。蛍光X線のみを検出する場合には被写体内の原子マッピングを行うことができる。次いで,エネルギーレベルとエネルギー幅を選択して,アクリルファントムと動物ファントムをイメージングする。(2)動物用エネルギー弁別X線CTシステムの開発: ここではCdTe検出器やLSO-MPPC検出器を使い,医療用X線CTと同様に被写体を固定し,X線管と検出器を回転させる方式のED-CTシステムを開発する。(3)動物用エネルギー弁別X線CTシステムによる撮影: 希薄な造影剤などが封入されたアクリルファントムをKエッジ法,デュアルエネルギーサブトラクション法により撮影して断層像を得る。次いで動物ファントム,特にナノ粒子や造影剤が残留する癌部位をイメージングする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度はまず反射式X線カメラを開発する。x-yステージに搭載して高速でスキャンするには(1)小型・軽量のX線装置が必要となるので,これをまず購入する必要がある。次いで,LSO-MPPC検出器を試作するには(2)MPPCなどの高感度の光電変換素子と(3)オペアンプなどの半導体素子が必要である。動物用ED-CTシステムの開発においては,現有の小型X線CTシステムのガントリーを利用するので,改めて製作する必要はない。 23,24年度に得られた研究成果を8月半ばにサンディエゴで開催されるSPIE Optics+Photonics 2012において講演したいので,この会議に出席するための旅費(航空運賃とホテル代)を科研費から支出したいと考えている。さらに11月末に仙台で開催される平成24年生体医工学会東北支部大会でも研究成果を発表したいと思う。
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