研究課題
●反射式X線カメラの構成: 小型のタングステンターゲットX線管ユニットに鉛製コリメーターを取り付けて線ビームを形成し,X線管ユニットをx-yステージに固定して被写体をスキャンする方式の反射式(後方散乱)X線カメラを開発した。検出器をX線管部に取り付け連動させることにより後方散乱イメージングを行った。蛍光X線のみを検出する場合には被写体内の原子マッピングを行うことができる。次いでエネルギーレベルとエネルギー幅を選択して,アクリルファントムと動物ファントムを撮影した。●エネルギー弁別検出器の開発: 高速CdTe,LSO-MPPC,Si-PINの検出器を試作し,これをxステージに取り付けて振動する方式のラインセンサーを開発し,3種のエネルギー弁別CT(ED-CT)システムを構築した。●エネルギー弁別用高速コンパレーターの開発: 高速コンパレーターICを使ったエネルギー弁別イメージングを行うため,シングルエネルギーコンパレーターとデュアルエネルギーコンパレーターを開発した。●ED-CT撮影: 上記3種のED-CTシステム,医用造影剤などを用いて,ヨウ素(I)およびガドリニウム(Gd)KエッジCT撮影を行った。●動物用ED-CTシステムの開発: CdTe検出器やLSO-MPPC検出器を使い,医療用X線CTと同様に被写体を固定し,X線管と検出器を回転させる方式のED-CTシステムを開発した。また希薄な造影剤などが封入されたアクリルファントムをKエッジ法,デュアルエネルギーサブトラクション法により撮影しているところである。
2: おおむね順調に進展している
アメリカ製の小型タングステンX線管ユニットを購入し,x-yステージに固定してスキャンする方式の反射式X線カメラを試作し,IやGdの蛍光X線分析を行った。特にGdを用いた場合には被写体深部の分析が可能であった。24年度当初,我々はCdTe検出器とシングルコンパレーターを使ったED-CTシステムを構築し,IやGdの汎用造影剤を使ったKエッジCT撮影を行った。次いで,LSO-MPPCなどの検出器と高速電荷有感式増幅器を開発し,マルチチャンネルアナライザー(MCA)を使ってスペクトルを測定した。増幅器から発生するイベントパルス幅は200 ns程度と短いので,使用したMCAでは正確な波高値を測定することはできなかった。これは,MCA中にあるADコンバーターのサンプリング周期が長いためである。MCAで測定される波高値は実際よりも低いが,スペクトルの形は同じであった。加えて,汎用Si-PINダイオードを使ったED-CTシステムも構築し,CdTeで得られたものと同等の断層像を得ることができた。シングルエネルギーコンパレーターを用いた場合,最低フォトンエネルギーはコンパレーターで決定され,最大エネルギーは管電圧に相当する。ゆえに,エネルギーの最大値と最小値を調整できるデュアルエネルギーコンパレーターを開発し,動作試験を行っているところである。被写体の周りをライン検出器とX線源が回転する方式の動物用ED-CTシステムではCdTeやLSO-MPPCを用いたが,高カウントレートのX線源に対応できるSi-PINの検出器が将来有望であると思われた。以上,これらの研究成果を10編程度の論文としてすでに投稿した。
●動物用エネルギー弁別X線CTシステムによる撮影: 希薄な造影剤などが封入されたアクリルファントムをKエッジ法,デュアルエネルギーサブトラクション法により撮影して断層像を得る。次いで動物ファントム,特にナノ粒子や造影剤が残留する癌部位をイメージングする。●マルチスライスCT用検出器の開発: CdTe,LSO-MPPC,Si-PINなどの検出器を5 mm間隔に並べたマルチスライス用ラインセンサーを開発する。したがって,このセンサーには,検出器と同数の電荷有感式増幅器が搭載される。また,エネルギー弁別には開発したコンパレーターデバイスが利用される。●撮影時間の短縮: CT撮影時間を短縮するには,X線のカウントレートを増加させて,ライン検出器の速度も増す必要がある。特に,高カウントレート時にエネルギー分解能を向上させるには100 MHz以上のSi-PIN検出器が有効と思われる。●マルチスライスCTの開発と画像の3次元化: 上記マルチスライスCT用検出器を基礎研究用と動物用のエネルギー弁別CTシステムに搭載して,マルチスライス撮影を行う。次にフリーソフトを用いて画像を重ね合わせ,3次元表示する。
平成25年度は先ずマルチスライス用ラインセンサーを開発する。スライス数に相当する複数個の検出器をxステージに搭載して高速でスキャンするには①マルチスライスモジュールが必要となるので,モジュール基盤を購入する必要がある。次いで,LSO-MPPC検出器を試作するには②高速カウント基盤,③MPPCなどの高感度の光電変換素子,④オペアンプなどの半導体素子が必要である。動物用ED-CTシステムの開発においては,現有の小型X線CTシステムのガントリーを利用するので,改めて製作する必要はない。 24,25年度に得られた研究成果を8月末にサンディエゴで開催されるSPIE Optics+Photonics 2013において講演したいので,この会議に出席するための旅費(航空運賃とホテル代)を科研費から支出したいと考えている。さらに11月末に仙台で開催される平成25年生体医工学会東北支部大会でも研究成果を発表したいと思う。
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