研究課題/領域番号 |
23591792
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
楫 靖 獨協医科大学, 医学部, 教授 (10273947)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | MRI / MR spectroscopy / 前立腺 / 癌 |
研究概要 |
平成23年度の研究の第一段階として、前立腺を模した3テスラMRI・MRS用人体ファントムの作成があった。種々の理由により、完成品が到着したのが平成23年10月末であり、直ちに試薬を購入し、前立腺液を模した溶液を調整してファントム内に封入したが、その際にファントム内に水漏れがあることがわかった。このため、修理に出し、使用できるようになったのが、平成24年2月になってからである。ファントム実験により、現在使用している条件よりも適切な条件を導き出し、臨床に応用する計画であったが、直ちに条件を変更できなかったため、現在の撮像条件のもと、泌尿器手術に関する解剖の文献と詳細に前立腺画像を対比する作業を進めた。その結果、撮影条件を適切なものに変更して評価したいと考えていた微細構造のうち、前立腺尾側部の周囲にある「副陰部動脈」が通常の条件で撮影したダイナミック造影像により走行を評価できる可能性を見いだした。副陰部動脈は、手術時に不用意に扱うと術後のインポテンツを生じる重要な構造である。手術前に評価することで、性機能障害のリスク軽減が期待できる。どのようなポイントを評価すれば、再現性も高くなるか、現在検討中である。また、前立腺内の層構造についても、多方向から前立腺画像を検討しなおした。その結果、生体内における前立腺自体の傾きが様々で、それにより横断像で得られる層構造の分布領域が大きく変化することを見いだし、癌の診断の際に知っておくべき情報として、講演発表を行った。これは、臨床現場でMRIによる偽陽性を生み出さないために必須の知識と考えられ、重要性は高い。平成23年度は、ファントム実験をほとんど行うことができなかったが、現在の画像であっても、注意深く多方向から観察すれば、評価できる微細構造があることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災の影響で、研究の要と考えていたファントムの作成が大幅に遅れ、しかも完成後に修理が必要となったことから、厳しい条件下での適切な撮影法の検討ができなかった。研究に必要なファントムが無い間は、これまでの通常撮影の画像を解析し直すことに専念した。それにより、当初は撮影条件の1つであるスライス厚を、現在よりも薄くした画像で細かく検討せねばわからないと考えていた微細構造のうち、重要な構造物の1つである副陰部動脈が、通常の画像でも評価できる可能性が出てきた。手術所見との対比は出来ていないが、通常とは明らかに動脈走行が異なる症例を複数発見できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度もファントムによる撮影条件の最適化を試みることと並行して、通常に撮影されている画像と解剖構造の対比を続け、どのようにすれば再現性高く、誰でも評価出来る状態になるかを見いだす。これのみでも泌尿器科医が手術を行う前には重要な情報となるので、積極的に学会発表を行い、一部は論文化を目指す。前立腺の代謝産物を見るMRSについても、ファントムを用いた検討を行い、代謝マップを再現性良く提示できるように工夫する。最適な撮像条件についてある程度めどが立った段階で、前立腺癌患者を対象に、微細な構造と代謝状態を評価する撮影を行う。その後に行われた手術の所見や病理所見、術後の性機能や排尿機能などのQOLとの対比を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
学会における成果発表のための学会旅費、異なる濃度の前立腺液を模したファントムを検討するためのファントム用試薬を購入する費用、大量のデータを保存するための記憶媒体などの費用、論文校閲費用等が必要となる。
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