研究課題/領域番号 |
23591792
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
楫 靖 獨協医科大学, 医学部, 教授 (10273947)
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キーワード | MRI / MR spectroscopy / 前立腺 / 癌 |
研究概要 |
平成23年度の検討で、当院の3テスラMRIで通常に撮影している現在の画像であっても、注意深く多方向から観察すれば、評価できる微細構造があることが示された。平成24年度も既存のデータを用いて、手術などの診療を行う上で重要な微細構造の描出能の検討を引き続き行った。そのうちnormal variantとして知られている副陰部動脈について、3テスラ装置で行われた前立腺癌検出用のダイナミック造影のデータを詳細に検討した。これまでの文献で報告されている頻度の範囲内で、MRIでも副陰部動脈の存在を確認することができた。また、隣接する解剖構造との位置関係も把握できるので、走行による型分類もMRIで正確に行うことができた。前立腺癌の手術時には、前もって副陰部動脈の走行路を術者が把握しておくことで、臓器血流の温存や出血の防止に役立つと考えられる。概要を第32回画像医学会で発表したが、内容を高く評価され、優秀な発表に与えられる会長賞を受賞した。現在、手術者が一目でわかるように、前立腺全体の輪郭と前立腺内の癌病巣、その周囲を走行する副陰部動脈を理解しやすく表示する方法を検討している。 他の重要な構造として前立腺腺組織の層構造がある。平成23年度から続けている検討を更に進め、MRI上で中心域、移行域、辺縁域の体積を測定し、解剖学的な知見と合致するか検討を加えた。その結果、3テスラ装置では健常前立腺の層構造はMRIで正確に反映できていた。中心域を無視した解剖構造に基づくこれまでの知見は、総合的に見直す必要があると考えられた。この内容について第4回アジア腹部放射線学会で発表した。 また、平成23年度に作成したファントムを用い、クエン酸、コリン試薬を調整し、適切な測定条件を見いだすために測定実験を繰り返したが、予想外にクエン酸の信号の変動が激しく、安定しなかった。現在原因を調査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度はファントム作成が遅れた分、既存の画像データの詳細な検討を行うことができ、平成24年度もその検討を続け、上記のような知見を得た。MR画像に関しては、本研究前は特殊な撮影法を作り出す必要性を感じていたが、思わぬ良い方向への展開であった。特殊な手法を作りあげたとしても普及しにくいので、一般施設で可能な撮影法とすることが望ましく、これに合致する流れである。また、当院にもロボット補助による前立腺全摘除術が可能な装置が導入された。これにより、術前に前立腺周囲解剖の詳細な把握が必要とされ、手術時に施行医が観察した内部の様子をビデオにより我々も共有できる。術前のMR画像に反映させるにはどうしたらよいか、現場の意見を元にした新しい撮影法を作り上げる必要があると感じている。 MRSを用いた検討では、安定的なスペクトルが得にくいため、原因を調査している。
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今後の研究の推進方策 |
計画では、前立腺癌の治療を行った患者の評価も含めていたが、平成25年が最終年度であり、短期間で成果を得ることは困難なため、術前の情報をより充実したものとする方向に切り替える。画像と解剖構造の対比を続けるが、ロボット補助手術が可能な当院の特徴を活かした内容とする。撮影法、評価法だけでなく、手術施行医が直感的に理解しやすい表示方法も工夫する。検討結果を合わせて、前立腺内の構造と腫瘍を再現性高く、客観的に評価できる手法を考案する。これを発展させ、前立腺癌MRI・MRS撮影法と評価法の標準化に役立てる。評価には病理結果の予測も含めて、適切な治療に結びつくシステムを考案したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
ロボット補助手術に関する情報収集や成果発表のための学会旅費、画像データの処理ソフトや画像データを保存するための記憶媒体などの費用、論文校閲費用等が必要となる。
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