研究課題
平成23~24年度の3テスラMRIの検討で、高空間分解能T2強調像で前立腺層構造が分離できる様子は従来の組織学的研究知見と合致しており、前立腺解剖を正確に描出している根拠の1つとなった。また、前立腺周囲にある副陰部動脈はダイナミック造影MRIで高率に描出された。手術前に把握することで出血のリスク軽減に役立つと考えられた。これらの結果から、前立腺癌治療前情報を充実させることに研究の焦点を絞った。平成25年度も前立腺層構造の特徴を評価する研究を進めた。また、副陰部動脈の存在が疑われ、ロボット補助下前立腺全摘除術が行われた症例では、術中の知見とMRI所見を対比し続けている。その中で、恥骨前立腺靱帯を術前のMRIでも確認できる例があった。手術と対比できた例は3例しかないが、手術が行われていない症例でも7割程度同定でき、手術の指標になり得るか検討を継続したい。もう一つの柱である3テスラMRスペクトロスコピーは、前立腺内での不均一性が著しいという欠点がある。平成23年度に作成したファントムを用い、平成24~25 年度にファントム実験を続け撮像条件の最適化を試みる一方で、前立腺癌症例でエコー時間のみ変化させてスペクトルの挙動を観察した。ファントム実験では、様々な撮像条件を検討したが不均一性を解消する最適条件を決定できなかった。この理由として、使用している3テスラMRI装置には電磁波を送信するポートが1箇所しかないことが考えられた。一方、生体での測定では、前立腺の体積が大きいと腺内のスペクトルも良好に測定され、0.5cc程度の領域から独立した癌の信号が得られた症例もあり、悪性度評価に役立った。ただし、直腸ガスの存在がスペクトルを大きく劣化させ、MRIで得られた情報を凌駕するほどではなかった。不均一性を解消するためには、電磁波送信ポートを複数有する装置で検討を行うことが必須条件と考えられた。
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