[18F]コリンの合成に関して薬剤部諸氏の合成条件の調整により薬剤の品質、薬剤収量安定の両面で昨年度に引き続き順調で、本年度も薬剤供給は順調であった。 獨協医科大学病院泌尿器科を受診し、前立腺癌あるいは疑いがあり、手術療法、放射線治療やホルモン療法、化学療法(併用を含む)開始前の患者計21名に[18F]コリン-PETを実施した。また前立腺癌治療後の再発診断目的でも8件実施し、本年度は合計29件の[18F]コリン-PETを施行した。3年間の研究期間に79件の[18F]コリン-PETを実施し得た。 本年度も前立腺癌治療前の局所での癌の存在部位評価に関して、前立腺全摘を施行された患者は当初の想定より少なく、また前立腺全摘されていても手術前にホルモン療法などが実施され、全摘標本上原発巣を指摘できないほど奏功する場合もあった。このため[18F]コリン-PETとMRIによる診断モダリティの直接的な対比が容易でないことが経験され、全摘標本でなく前立腺生検の結果との比較に留まらざるを得なかった。 遠隔転移に関して、骨転移とリンパ節転移に関する感度は各々85.7%、100%、特異度は各々100%、96.9%、正診率は97.2%、97.2%という成績であった。判断基準は画像所見や臨床所見であり、昨年度当院に導入されたロボット手術が多くなった関係で、骨盤内リンパ節郭清が行われておらず、微小なリンパ節転移が偽陰性となっているものと考えられ、微小骨転移も偽陰性となるものと考えられ注意を要する。 前立腺癌治療後に再発診断目的で2回目の[18F]コリン-PET/CTを行われた方は3年目でも少なく、治療開始前のPETを実施していない方も対象としたが、満足な解析ができる症例数が得られていない。研究期間終了後も再発診断を主眼とする[18F]コリン-PETを実施し有用性を検討する予定である。
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