研究課題/領域番号 |
23591795
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
陣崎 雅弘 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (80216259)
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研究分担者 |
今西 宣晶 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (00184820)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 2重エネルギーCT |
研究概要 |
1)仮想単色X線CT画像における画質改善効果の検討として以下を行った。90例の肝転移を対象にCNRやnoiseが仮想単色X線像のどこで最もよくなるかを検討した。その結果、およそ70keV付近が最適であることがわかった。また、noiseはBMIが大きくなるにつれ高くなり、CNRもBMIが大きくなるにつれ低くなることがわかった。我々は既に、動脈モデルでは70keV付近が最適であることを明らかにしていたが、腫瘍においても70keV付近が最適であることを明らかになった。2)ビームハードニングアーチファクト(BHA)の改善効果として以下を行った。心筋潅流CTにおいて、左室と大動脈の間にBHAによる低吸収域が出現し、虚血領域と誤診することがあり、正しい補正が行われることが期待される。摘出したご遺体の心臓の心腔に造影剤を入れ、近傍に造影像をいれたシリンジを置き大動脈を模した。これを躯幹ファントムにいれ、120kVpと2重エネルギーCTを撮影した。120kVpでは後壁に低吸収域が見られたが、2重エネルギーCTでは周囲心筋と同等の濃度に描出され、2重エネルギーCTでのBHAの補正が検証された。3)石灰化の描出精度の検討として以下を行った。従来のCTでは石灰化は実際より大きく描出され、サイズ計測は誤差が大きかった。仮想単色X線CT画像は、従来よりはるかに高いエネルギー設定の画像を作ることができるため、石灰化のサイズ測定精度が向上する可能性が高い。サイズのわかっている石灰化角材で 120kVpと2重エネルギーCTの撮影を行い、仮想単色X線CT画像でのサイズの正確性を見た。その結果、65keVでの半値幅が120kVpと同等になり、それ以上のkeVにおいては120kVpよりもブルーミングが減少した。このことより、仮想単色X線像は120kVpよりも石灰化のサイズを精度高く描出できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究の目的は、2重エネルギーCTが120kVpに代わって標準撮影になる可能性、および2重エネルギーCTが120kVpに比べて新たにどのような利点をもたらすか(重度石灰化病変の狭窄度診断も向上、仮想単純CT像など)を明らかにすることである。 基礎検討で明らかにすることとしては、以下の課題を挙げていた。(1)仮想単色X線CT画像は、標準体格のみではなく、大きな体格や小児においても、120kVp画像よりもnoiseやCNRが向上するポイントがあるのか、(2)仮想単色X線CT画像でのビームハードニングアーチファクトの抑制効果の検討、(3)仮想単色X線CT画像での石灰化のサイズ計測の精度。(4)物質弁別画像(ヨード強調画像)の血管描出能の検討、(5)心臓動態ファントムを用いて物質弁別画像の冠動脈狭窄やステント内狭窄診断能の検討、である。このうち(2)と(3)は終了した。 臨床応用の検討で明らかにすることとしては、以下の課題を挙げていた。(1)仮想単色X線CT画像の画質評価、(2)物質弁別画像(ヨード強調画像)での冠動脈重度石灰化病変の狭窄評価、(3)物質弁別画像(ヨード強調画像)での末梢動脈重度石灰化病変の狭窄評価、(4)物質弁別画像(仮想単純CT像)の画質評価、である。このうち、(1)は肝転移をモデルにおこない、(2)、(3)、(4)は現在進行中である。 以上は、1年目としては想定通りの進行状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も引き続き、基礎と臨床の両方の検討を行っていく。 基礎検討項目として、仮想単色X線CT画像は標準体格のみではなく、大きな体格や小児においても、120kVp画像よりもnoiseやCNRが向上するポイントがあるのかを検討する。 臨床応用の検討では、質弁別画像(ヨード強調画像)での末梢動脈重度石灰化病変の狭窄評価、および物質弁別画像(仮想単純CT像)の画質評価についての結果を出す予定である。両者とも、画質を向上させる再構成法やソフトを持ち込んだ検討を開始しており、よりよい診断能を出すことができると思われる。物質弁別画像(ヨード強調画像)での冠動脈重度石灰化病変の狭窄評価も行っているが、臨床的に使用できるようになるためには、弁別能がもう少し向上することが必要と思われる。そこで、画像再構成法や画像表示法の見直しから検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
小児、肥満患者においても仮想単色X線像は70keV付近において、120kVpより画質の向上が得られるのかを調べるため、小児や肥満患者に相当するファントムを購入する。また、2重エネルギーCTを用いて多くの臨床データを取得している。2重エネルギーCTのデータは、120kVpの撮影に比べて4倍になるため、これらのデータ整理や保存のための媒体を購入する。さらに、翻訳、校閲、統計解析にかかわる経費も多く必要である。また得られた研究成果は国内、国外の学会、研究会にて発表するとともに、一流紙への掲載を行っているが、その際の旅費や投稿費が必要である。
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