研究課題/領域番号 |
23591795
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
陣崎 雅弘 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (80216259)
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研究分担者 |
今西 宣晶 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (00184820)
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キーワード | 2重エネルギーCT / 冠動脈 / 末梢動脈 |
研究概要 |
1)腹部における仮想単色X線CTと120kVpの画質の比較 51例の腹部CTで、造影後90秒後に2重エネルギーCTと120kVpの画像を8cmの範囲に限局して連続撮影を行った。両者の撮影間隔は4秒程度で、撮影の順番はランダム化し、被曝線量は同等(12.7mGy)にした。2重エネルギーCTから作成した70keVと120kVpの肝臓、大動脈、筋肉の画質を比較した。その結果、70keVの画像は120kVpの画像よりいずれの部位でもnoiseは少なく、SNRもCNRも有意に向上していた。腹部CTでは70keV画像は120kVp画像を置換できるものであることが示された。 2)末梢動脈重度石灰化病変の狭窄評価 末梢血管の動脈硬化が疑われる21症例に2重エネルギーCTを施行した。ヨード画像(物質弁別画像)の最大値投影法像を作成し、血管造影所見と対比した。その結果、狭窄診断能は、感度90.8%、特異度 88.4%、正診率 89.0%と比較的高いが、通常の120kVpで報告されている診断能と著変はなかった。また、重度石灰化セグメントに限ると感度55.6%、特異度 85.7%、正診率 68.8%と低い値であった。従って、現在の2重エネルギーCTによるヨード画像は、重度石灰化病変の診断に有効とは言えず、石灰化除去に関し、更なる技術の向上が必要と判断した。 3)冠動脈重度石灰化病変の狭窄評価 冠動脈石灰化が疑われる症例50例に対し、dual energy CTを施行した。ヨード画像(物質弁別画像)の最大値投影法像、MPR像を作成した。石灰化の除去について検討したが、石灰化の残存や過剰除去の症例がかなり見られた。更に、画質を向上させる再構成法やソフトを持ち込んだが、著変はなかった。このため、現状のソフトでは石灰化除去が冠動脈においても十分ではないと思われ、更なる技術の向上が必要と判断した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究の目的は、2重エネルギーCTが120kVpに代わって標準撮影になる可能性、2重エネルギーCTが120kVpではなかったどのような利点をもたらすか(重度石灰化病変の狭窄度診断も向上、仮想単純CT像など)を明らかにすることである。 基礎検討と臨床応用の検討をおこなっているが、今年度は主に臨床応用の検討を行った。臨床応用で明らかにすることとしては、以下の課題を挙げていた。①仮想単色X線CT画像の画質評価、②物質弁別画像(ヨード強調画像)での冠動脈重度石灰化病変の狭窄評価、③物質弁別画像(ヨード強調画像)での末梢動脈重度石灰化病変の狭窄評価、④物質弁別画像(仮想単純CT像)の画質評価、である。このうち①は51症例に対し“腹部における仮想単色X線CT画像と120kVp画像の画質の比較”をおこない、120kVpを置換できる可能性があることがわかった。②は21症例に対し、③は50症例に対しおこなったがいずれも、石灰化除去が現在の技術では十分ではなく、更なる技術の向上が必要と判断した。④は現在進行中である。 以上は、2年目の研究としては想定通りの進行状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は引き続き、基礎と臨床の両方の検討を行っていく。 基礎検討項目として、仮想単色X線CT画像は標準体格のみではなく、大きな体格や小児においても、120kVp画像よりもnoiseやCNRが向上するポイントがあるのかを検討する。 臨床応用の検討では、唯一残った課題である“仮想単純CT像の画質評価質”を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
以下の使用を考えている。 1)大きな体格や小児における仮想単色X線CT画像の有用性を検討するために、ファントムを購入する。 2)これまでの成果を発表するための旅費 3)論文を投稿するための英文校正代 未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品の購入に充てる予定である。
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