研究課題/領域番号 |
23591799
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
五味 達哉 東邦大学, 医学部, 准教授 (90266966)
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研究分担者 |
村田 望 東邦大学, 医学部, 助教 (90516270)
長基 雅司 東邦大学, 医学部, 講師 (10172561)
甲田 英一 東邦大学, 医学部, 教授 (80101989)
常喜 信彦 東邦大学, 医学部, 准教授 (40349882)
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キーワード | 造影剤腎症 / 糖尿病 / 腎機能障害 / 脱水 / N-gal |
研究概要 |
造影検査前に血清クレアチニン値を測定し,造影剤腎症を防ぐことは必須である.しかし造影剤腎症を懸念するあまり,本来必要である造影検査が施行されない事態は避けなければならない.このため造影剤腎症の発症に関連する危険因子を正確に認識する必要がある. 血清クレアチニンに加えて,バイオマーカーである Neutorophil gelatinase-associated lipocalin (N-gal) を測定し,造影 CT 後の造影剤腎症の検討を行った症例では,造影剤腎症の危険因子である軽度の腎機能障害および糖尿病の有無に関わらず,造影剤腎症の発症はみられなかった.また造影剤投与 48 時間後の血清クレアチニンが造影前より 20% ほど上昇した症例でも,造影前後の N-gal の変動はみられなかった.このため造影剤腎症の発症は実際には少ないと考えられた. このほかの造影剤腎症のリスクファクターに脱水がある.近年,地球温暖化の影響で夏の最高気温が 35℃を超える日が続くようになってきている.このような状況では CT を受ける外来患者が来院するまでの間に少なからず脱水になり血清クレアチニンが上昇する可能性がある.今回,造影 CT 直前の血清クレアチニンを測定し,検査前の血清クレアチニンと検査直前の血清クレアチニンの相違および季節による相違を検討した.結果として造影 CT 直前の脱水はみられなかった.また全体として検査前と検査直前の血清クレアチニンに有意差はみられなかった.しかし最高気温が 30℃を超えた 7月から9月中旬の間では検査前血清クレアチニンと比べ検査直前の血清クレアチニンは優位に上昇していた(p<0.01).しかし検査後に新たに腎機能障害を発症した症例はみられなかった. 以上より造影剤腎症の発症は実際には少ないと考えられるが,危険因子を正確に理解する必要がる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
造影剤腎症とその危険因子である軽度の腎機能障害,糖尿病および脱水に関する検討を行った.特に脱水に関しては季節との関連を含め検討を行ったところ,季節に関係なく検査前に脱水の発症はないとこがわかったが,高温の日では血清クレアチニンが有意に上昇していることがわかり,高温の日では検査前の脱水に注意する必要があると考えられた.軽度の腎機能障害および糖尿病に関しては,現状では結果は出ているものの,より症例数を増やして検討する必要があると考える.
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今後の研究の推進方策 |
造影剤腎症の危険因子である軽度の腎機能障害および糖尿病に関してはより症例数を増やして検討する.またこのほかの造影剤腎症の危険因子の検討を新たに行うこととする.
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次年度の研究費の使用計画 |
造影剤腎症とその危険因子の関連に関して検討してきたが,当初の予定より症例数が少ない状況となったため,その解析に使用する予定であった使用額も少なくなり,次年度使用額が生じた. 造影剤腎症とその危険因子の関連に関し,症例数を増やして検討する予定のため消耗品(薬品など)および解析費が必要となる.このほか新たな危険因子を検討項目に加える予定であり,これに応じて症例数を増やす予定のため消耗品(薬品など)および解析費が必要となる.また学会発表のための旅費等に使用する予定である.
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