研究課題/領域番号 |
23591809
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
関 千江 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 研究員 (40443080)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 放射線 / 脳神経疾患 / 痴呆 / 老化 |
研究概要 |
アルツハイマー病の中心病理であるアミロイドβ蛋白(Aβ)沈着の始まりはAβ分泌と除去のバランスの崩れとも捉えられる。本研究では、アミロイド前駆体蛋白遺伝子改変マウスを対象とし、小動物PETで脳血流代謝・アミロイド沈着を長期的に追跡することで、慢性的な脳血流低下や神経活動がAβ沈着に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。平成23年度は、若年野生型マウスを用い、血流低下のAβ沈着に及ぼす影響を調べるため、(1)慢性片側脳低血流モデルマウス作製を行うこと、(2)Aβ沈着PETマーカーである[11C]PIB-PETによるAβ蓄積と局所脳血流量の同時定量法を作成した慢性片側脳低血流モデルマウスで[11C]PIB-PETによる局所脳血流量評価の検討を行うこと、さらに作製した慢性片側脳低血流モデルマウスの局所脳血流量の長期的な変化を追い、慢性的な低灌流の維持を確認することで、慢性片側脳低血流モデルマウス作製法の確認を行なった。(1) 慢性片側脳低血流モデルマウス作製:若年野生型マウスを対象とし、片側脳低灌流はマウスの片側総頸動脈永久結紮を行い、局所脳血流量をMRIにより測定し、作製法の評価を行った。結紮側大脳半球では結紮後脳血流が結紮前の半分程度に低下した後、約2ヶ月で健側の8割程度まで回復するものの、その状態が6ヶ月以上維持することを野生型マウスで確認した。(2) [11C]PIB-PETによる局所脳血流量評価の検討:[11C]PIB静脈内投与後60分間のPETダイナミック収集撮像を行い、参照領域法のひとつsimplified reference tissue model (SRTM)の算出パラメータR1(取り込み率の小脳比)で片側脳低灌流モデル作製から概ね1カ月後までの顕著な血流低下の範囲の同定と、R1による脳血流量の定量が行えることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以上、平成23年度は野生型マウスを用い、慢性片側脳低灌流モデルマウスの作製法の確認を達成することが出来た。また、[11C]PIBによる局所脳血流量評価は、結紮後間もない時期での[11C]PIB-PETにより、血流低下領域の、R1による対小脳血流量比として定量可能なことを突き止めた。アルツハイマー病モデルマウスであるアミロイド蛋白前駆体遺伝子トランスジェニック(APP-Tg)マウスへの展開についてはAPP-Tgの生産と加齢を待つことで、次年度より着手することとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、慢性片側脳低灌流モデルをAPP-Tgマウスへの展開する。モデルマウス作製後、1ヶ月ごとに6ヶ月間MRIによる脳血流量、PIB-PETによるAβ沈着を評価し、最後のPIB-PETの後脳摘出を行いAβ沈着、神経脱落、白質病変等の評価を行う。また、神経活動とAβ蓄積の関係を調べるため、慢性局所脳賦活モデルマウスの作製に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、消耗品費用は動物購入および飼育、モデル作製のための麻酔薬等の試薬、手術器具、組織染色用試薬等の購入に充てる。また、旅費として日本核医学会学術総会(札幌)での成果発表に充てる。その他の経費として、脳組織病理評価の外部機関への委託に充てることを計画している。
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