研究課題/領域番号 |
23591810
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研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
内山 菜智子 独立行政法人国立がん研究センター, がん予防・検診研究センター, 室長 (00318479)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 放射線医学 / 画像工学 |
研究概要 |
最近の画像工学とコンピュータ技術の進歩を背景として,医用画像情報におけるデジタル化が急速に進行している.各種デジタル検査装置の高性能化により診断画像は高精細化し,診断能の向上に大きく貢献している.乳がん診断におけるマンモグラフィの分野では、フィルム系アナログマンモグラフィとデジタルマンモグラフィが共に使用されている現況であり、今後はデジタルマンモグラフィが主流となるものと考えられる。乳房撮影装置についても、従来のマンモグラフィ画像と異なり、管球を移動して撮影することにより、断面ごとの撮影が可能となる最新乳房撮影装置であるデジタルトモシンセシスが、海外において開発臨床導入されてきており、欧米での臨床評価において、その有用性が立証されてきている。デジタルトモシンセシスは、乳腺内病変の描出能向上および乳腺の重なりによる擬陽性の軽減により、乳がんにおける精査においては病変精度の向上、検診においては擬陽性病変の減少による不要な精査の減少に貢献しうるとして、精査と検診両面において期待されている。さらに、従来の2Dマンモグラフィ画像と異なり、3Dデータとしてのデジタル画像情報に基づいたコンピュータ支援検出装置(CAD)、新たな画像診断および画像解析システム開発等のデジタル系画像の応用が可能である。本研究では臨床評価におけるデジタルトモシンセシスの有用性に関するエビデンスの確立と、デジタル画像データを用いたコンピュータ支援診断(CAD)を含む画像診断、解析システムを、研究協力者であるデジタルトモシンセシス撮影装置メーカー開発本部とともに共同で行うものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2009年10月より取得された乳癌症例を中心とした臨床データで、病理学的診断がなされた303症例333病変についての検出能、描出能の評価を行ない、詳細な有用性の評価を行った。検出能についてはFFDMでは平均86.8%であったのに対し、FFDMにDBTを追加した場合には平均96.8%であった。また、乳腺濃度の差により分類したデータでは、FFDMでは脂肪性、あるいは散在性乳腺(BIRADS Density 1-2) では、88.9%、不均一あるいは高濃度乳腺(BIRADS Density 3-4) では83.7%、 FFDMにDBTを追加した場合には脂肪性、あるいは散在性乳腺では97.4%、不均一あるいは高濃度乳腺では94.8%であった。乳腺濃度にかかわらず、FFDMにDBTを追加した群で、統計学的有意差を持って検出能が向上した(P<0.05)。描出能向上 (BIRADS 1-2 から BIRADS 3-5 、あるいは BIRADS 3 からBIRADS 4-5)は96病変(28.8%)に認められた。また、本年度においては、研究協力者である撮影機器メーカーと共同で画像ワークステーションのDICOM画像情報を解析し、適正画像表示の検討を行なった。その結果、読影ワークフローの構築が可能となり、従来のマンモグラフィ専用読影装置と比較し、効率的な読影が可能となった。本年度においては、精査目的の診断における診断能の向上の有用性に関するエビデンスを得ることができ、本成果について、論文、著書にて発表を行った。また国内においては日本医学放射線学会総会、日本乳癌検診学会総会、国際学会ではCARS2011(ドイツ・ベルリン)、ECR2012(ウイーン・オーストリア)、CSR2012(中国・瀋陽)において成果につき講演発表をおこなった。
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今後の研究の推進方策 |
臨床症例の検討により、デジタルトモシンセシスの精査診断における有用性が示唆された。これにより、画像診断および画像解析システム開発等をさらに検討する必然性も示唆されたため、今後画質、診断能向上を目的とする新たなデジタルトモシンセシス対応画像処理アルゴリズムの開発、診断支援システムの開発に関しての検討を研究協力者である撮影機器メーカー開発本部担当者とともに研究代表者が共同で平成24年度から平成25年度にかけて行う予定である。具体的には、研究協力者である撮影機器メーカーと共同で画像ワークステーションの読影支援についての機能やアルゴリズムについての開発検討を行う。またデジタルトモシンセシスの診断能の向上の有用性に関するエビデンスについてさらに臨床データ蓄積を図り、解析を進め、成果につき論文や学会にて発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度および平成25年度においては、前年度から得られた臨床データをさらに解析し、デジタルトモシンセシスの精査診断における有用性に関する論文・国内外学会における発表を行うとともに、国際学会等におけるデジタルトモシンセシスの最新情報についての調査検討を行うために研究費を履行する予定である。
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