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2012 年度 実施状況報告書

脳卒中CT画像に及ぼす線量効果

研究課題

研究課題/領域番号 23591814
研究機関名古屋大学

研究代表者

今井 國治  名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20335053)

研究分担者 池田 充  名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50184437)
川浦 稚代  名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60324422)
キーワードCTアンギオ検査 / 動脈瘤 / 脳梗塞 / 画質評価 / 水晶体線量 / 逐次近似再構成画像 / 適正撮像条件
研究概要

申請研究の主たる目的は、脳卒中CT検査における被ばく線量(重要臓器線量)と画質との関係を明らかにし、最適プロトコル確立のための基礎情報を与えることである。本年度は逐次近似CT画像に注目し、頭部CTアンギオ検査における画質と被ばくとの関係について検討した。その成果概要を以下に示す。
本研究では、様々な撮像条件(X線管電圧:80-140kV、実効mAs値:49-350mAs)で得られたCTA画像を逐次近似処理した上で、血管像のコントラスト分解能及び鮮鋭度の定量評価を行った。逐次近似処理したCTA画像は、従来のCTA画像よりもノイズは少なく、コントラスト分解能も改善された。しかし、その処理割合を40%以上にしても、ほとんどコントラスト分解能の改善は認められなかった。一方、鮮鋭度に関しては処理割合が40%以上で急激に低下し、血管輪郭は不鮮鋭となった。これらの結果から、逐次近似の処理割合は、40%程度が妥当であることが示された。さらに、この傾向は、どの撮像条件においても同様であった。昨年度、申請者等は重要臓器線量の1つである水晶体線量が、X線管電圧の減少と共に軽減することを明らかにした。そこで、CTA検査時における被ばく線量軽減を目的に、管電圧80kV、実効mAs値350mAs(最大出力)で得られた逐次近似CTA画像と従来の撮像条件で得られたCTA画像との比較を行った。逐次近似処理割合40%で得られたCTA画像のコントラスト分解能は、従来の撮像条件で得られたものよりも1.5倍高くなり、鮮鋭度も3.2倍程度改善された。これとは対照的に、水晶体線量は従来の撮像条件よりも、20-30%程度軽減された。以上の結果から、管電圧を80kV、実効mAs値を最大、逐次近似処理割合を40%程度にすることにより、良好な画質になることが示唆された。なお、この逐次近似画像の画質解析で学術奨励賞を受賞した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本年度は逐次近似CTA画像に注目し、頭部CTアンギオ検査における画質と被ばくとの関係について検討した。
これまで逐次近似処理を施すと、CT画像は不鮮鋭になると言われてきた。しかし、これはあくまでも主観的な評価結果であり、定量的なものではない。このように定量的な評価が行われていない理由として、鮮鋭度の定量評価法が存在しないことが挙げられる。そこで前年度末から、申請代表者を中心に鮮鋭度評価法の理論構築を始め、様々な問題点を検討した後、臨床画像にも適用可能な鮮鋭度評価法を考案した。(Toepliz行列を用いた鮮鋭度評価法)これを用いて、逐次近似CTA画像の鮮鋭度を評価したところ、「研究実績の概要」で述べたように、逐次近似処理割合を増加させると、ある地点で鮮鋭度が急激に低下すると言う事実を定量的に突き止めた。これは言うまでもなく、新しい知見であると言える。また、申請者らが以前考案したCNR評価法(Gauss法によるCNR解析法)を用いて、コントラスト分解能を評価したところ、処理割合を40%以上にしても、コントラスト分解能はあまり改善されないことがわかった。つまり、ある割合以上、逐次近似処理しても、ただ、血管輪郭が不鮮鋭になるだけで、それに見合ったコントラスト分解能が得られないことが定量的に示され、最適撮像条件を検討する上で、一つの有益な情報を与えたのではないかと思われる。
以上の内容は国内で開催された学会やシンポジウム等で発表し、「研究実績の概要」で述べたように、その一部は受賞対象となった。さらにこれらの結果は、既に外国の著名論文誌に投稿しており、加えて、平成25年に開催される二つの国際会議で発表する予定で準備を進めている。このことから、研究計画書に記載した通り、研究成果は国内外に発信できているのではないかと思われる。
以上のことから、現在までの研究は順調に進んでいるものと思われる。

今後の研究の推進方策

今後の研究予定は、
1.急性期脳梗塞部の検出に必要な画質とX線線量、2.Dual Energy CT画像による急性期脳梗塞の検出能の検討であるが、実験は昨年度、既に実施している。従って、本年度はその実験結果の解析を行う。具体的な検討内容は以下の通りである。
項目1に関する画質評価ではAxial像を対象に行う。その評価項目は、脳血管ファントム画像の場合と同様、a)画像ノイズ及びCNRによるコントラスト分解能の評価、b)ストリークアーチファクトの定量評価、c)エントロピーによる情報量解析を予定している。さらに、d)昨年度に考案したToepliz解析法を用いて脳梗塞部の鮮鋭度評価を行い、この評価結果と併せて、どのような撮像条件の時に急性期脳梗塞部が明瞭に描出できるかについて定量的に検討する。その際、どの程度の被ばく線量になるかについても査定する。
項目2に関する画質評価ではDual Energyスキャン(80kV及び140kV)で得られた仮想単色X線CT画像を対象に行う。従来、脳梗塞を検出する際、高電圧-高電流撮像を用いてCT検査が行われてきた。その理由として、ビームハードニング効果の抑制が挙げられる。今回、ここで対象にする仮想単色X線CT画像では、この効果によるノイズ増加は起こらないと言われている。それ故、この撮像法は急性期脳梗塞のような低コントラスト病変の検出において臨床的に有用であると思われる。そこで本項目では、仮想単色X線CT画像が脳梗塞検出に有益であるかについて議論する。その内容は様々なエネルギーで再構成された仮想単色X線CT画像を用いて、上述のa)~d)を検討し、従来のCT画像と比較する。さらに、この画像再構成法によって、どの程度被ばく線量の軽減が可能かについても検討する。
以上の項目で得られた結果は、随時、学会や研究会等で発表し、最終的には投稿論文として世界に発信する。

次年度の研究費の使用計画

該当なし

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Method of Measuring Contrast to Noise Ratio (CNR) in Nonuniform Image Area in Digital Radiography2013

    • 著者名/発表者名
      Masaki Mori
    • 雑誌名

      Electronics and Communications in Japan

      巻: in press ページ: in press

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Dose reduction and image quality in CT angiography for cerebral aneurysm with various tube voltage and current settings2012

    • 著者名/発表者名
      Kuniharu Imai
    • 雑誌名

      The British Journal of Radiology

      巻: Vol. 85 ページ: 673-681

    • DOI

      10.1259/bjr/63268088

    • 査読あり
  • [雑誌論文] CT画像の画質と数学2012

    • 著者名/発表者名
      今井國治
    • 雑誌名

      健康文化

      巻: 第47号 ページ: 133-137

  • [学会発表] Top-hat変換型Gauss法を用いた脳梗塞画像のNoise Mapping2013

    • 著者名/発表者名
      高瀬郁子
    • 学会等名
      2013年電子情報通信学会総合大会
    • 発表場所
      岐阜・岐阜大学
    • 年月日
      20130319-20130322
  • [学会発表] 逐次近似再構成を用いた頭部3D-CT Angiographyにおける血管輪郭の定量評価2013

    • 著者名/発表者名
      遠地志太
    • 学会等名
      第75回情報処理学会全国大会
    • 発表場所
      仙台・東北大学
    • 年月日
      20130306-20130308
  • [学会発表] 逐次近似法を用いた脳動脈CT画像の画質評価2012

    • 著者名/発表者名
      高瀬郁子
    • 学会等名
      電子情報通信学会イメージメディアクォリティ研究会
    • 発表場所
      千葉・千葉大学
    • 年月日
      20121123-20121123
  • [学会発表] 頭部3D-CT Angiogtaphyにおける血管輪郭の定量評価2012

    • 著者名/発表者名
      遠地志太
    • 学会等名
      電子情報通信学会イメージメディアクォリティ研究会
    • 発表場所
      千葉・千葉大学
    • 年月日
      20121123-20121123
  • [学会発表] 頭蓋内及び四肢血管撮影における等浸透圧造影剤イオジキサノールの臨床的有用性-その22012

    • 著者名/発表者名
      旗道子
    • 学会等名
      第28回日本脳神経血管内治療学会学術総会
    • 発表場所
      仙台・仙台国際センター
    • 年月日
      20121115-20121117
  • [学会発表] 臓器別線量低減機構を用いた頭部X線CT検査における画質と線量評価2012

    • 著者名/発表者名
      川浦稚代
    • 学会等名
      平成24年日本生体医工学会東海学支部術大会
    • 発表場所
      名古屋・スズケン
    • 年月日
      20121020-20121020
  • [学会発表] 逐次近似法を用いた脳梗塞ファントム画像の画質評価2012

    • 著者名/発表者名
      柘植雄介
    • 学会等名
      平成24年日本生体医工学会東海学支部術大会
    • 発表場所
      名古屋・スズケン
    • 年月日
      20121020-20121020
  • [学会発表] 逐次近似法で再構成した脳動脈瘤CT画像の画質評価2012

    • 著者名/発表者名
      高瀬郁子
    • 学会等名
      第40回日本放射線技術学会秋期学術大会
    • 発表場所
      東京・タワーホール船堀
    • 年月日
      20121004-20121006
  • [学会発表] 自己相関行列(対象Toeplitz行列)を用いたCT Angiographyの鮮鋭度評価2012

    • 著者名/発表者名
      森政樹
    • 学会等名
      2012年電子情報通信学会ソサエティ大会
    • 発表場所
      富山・富山大学
    • 年月日
      20120911-20120914
  • [学会発表] Dual Energy Scanを用いた頭部3D-CT Angiographyにおける鮮明度評価2012

    • 著者名/発表者名
      遠地志太
    • 学会等名
      平成24年電気学会電子・情報・システム部門大会
    • 発表場所
      弘前・弘前大学
    • 年月日
      20120905-20120907
  • [学会発表] 医用画像の視覚評価をどこまで物理評価で置き換えることができるか2012

    • 著者名/発表者名
      今井國治
    • 学会等名
      日本医学放射線学会医用画像認知研究会
    • 発表場所
      名古屋・名古屋大学
    • 年月日
      20120901-20120901
    • 招待講演
  • [学会発表] 脳血管CT Angiogtaphyの画質評価-Lorentz解析法の考案2012

    • 著者名/発表者名
      高瀬郁子
    • 学会等名
      第31回日本医用画像工学会大会
    • 発表場所
      札幌・札幌厚生病院
    • 年月日
      20120804-20120805
  • [学会発表] 頭蓋内及び四肢血管撮影における等浸透圧造影剤イオジキサノールの臨床的有用性2012

    • 著者名/発表者名
      西本卓也
    • 学会等名
      アジア太平洋IVR学会
    • 発表場所
      神戸・神戸ポートピアホテル
    • 年月日
      20120601-20120602

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公開日: 2014-07-24  

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