研究課題/領域番号 |
23591815
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岩野 信吾 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90335034)
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研究分担者 |
長縄 慎二 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50242863)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | COPD / 肺癌 / コンピュータ支援診断 |
研究概要 |
申請者らは肺が5つのコンパートメント(肺葉)に分割されていることに着目し、3D-CTからマニュアル法(コンピュータ上で葉間胸膜をトレースすることによって肺葉を分割する手法)で肺の各肺葉の容積を算出し、呼吸機能との相関を解析し、肺の上・中・下葉の各機能が異なっていることを明らかにした。すなわち1秒量や拡散能には上葉よりも下葉の容積が有意に強く関与するという新たな知見を得て、これを英語論文としてJournal of Thoracic Imagingに投稿し掲載された(Matsuo K, Iwano S et al. J Thorac Imaging. 2012 May;27(3):164-70.)。 続いて申請者らは、本研究計画どおり胸部3D-CTから半自動的に肺葉容積を算出する新型コンピュータ支援診断(CAD)を導入して肺癌術前患者の肺葉容積解析を行った。そこに従来の吸気撮影の3D-CTによる肺葉容積と呼気で撮影した3D-CTの解析を組み合わせることで、下葉の収縮率が1秒量に大きく影響するを見出し、これを和文論文として発表した(岩野、長縄ら 臨床放射線 2012;57(1):55-61)。 肺癌患者は重喫煙者でCOPD・肺気腫を合併してもともと低肺機能となっているケースが多く、術後肺機能が低下しすぎないように手術計画を立てる必要がある。術後肺機能をより正確に予測するためには、切除肺の容積を正確に計算し、なおかつ術式(上葉or下葉切除術)によって予測値を細かく修正する必要性がある。平成23年度の研究成果は、今後の胸部3D-CTによる正確な術後肺機能予測研究のベースとなるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は新型CADによる3D-CT肺葉容積算出の精度について検討した。CADによって算出した肺葉容積、特に下葉の容積がスパイロメトリーによる呼吸機能の1秒量・拡散能と有意に相関していることを明らかにし、和文論文として公表した。この研究成果は次年度以降の研究につながるもので、研究は順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度は東日本大震災の影響で科研費の配分が遅れたため、研究計画書に記載した3次元画像解析システムボリュームアナライザーSYNAPSE VINCENT一式を購入することができず、機能限定版のワークステーションを導入した。そのため設備備品の余剰研究費が発生し次年度に繰り越すこととなった。一方でX線CTの被曝低減がますます重要な課題となってきた。被曝低減のために低線量でCTを撮影する必要があるが、同時に画質の劣化をもたらすため、CAD解析に影響が出るかもしれない。そこで低線量CTに対するCADの精度に関するファントム実験を検討項目に加えることとした。その他の点についてはおおむね研究計画書の通り研究を継続する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度繰り越しの研究費(設備備品)によって京都科学株式会社の胸部ファントム N-1(型番41337-000 PH-1)を購入し、低線量CTによるファントム実験を行う予定とする。その他の旅費・謝金については当初の研究計画書の通り使用する。
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