研究課題/領域番号 |
23591815
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岩野 信吾 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90335034)
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研究分担者 |
長縄 慎二 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50242863)
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キーワード | 肺癌 / 手術シミュレーション / 3D-CT / COPD |
研究概要 |
本研究テーマの目的の1つは胸部3D-CTからマニュアル法とCADで肺葉別の容積をそれぞれ算出し、それらを比較することによってCADの測定精度を明らかにすることである。本年度は肺葉容積の計算を省力化するために開発した全自動肺葉容積測定CADの精度について検討を行った。これまで研究に使用してきた半自動肺葉容積測定CADでは、葉間胸膜の一部を手動で入力する必要があり、入力する部位によっては測定ごとに誤差を生じる危険性があった。そこで誤差の原因となる手動入力を省き、全自動で肺葉を分割して容積を計算するCADの開発を進めた。全自動CADでは、各肺葉に分布する気管支の走行をコンピュータが自動認識し、その分布から葉間を推定し、肺葉を分割することができるようになった。本CADでは、手動入力が必要なくなったことで入力に要する労力・時間を省力化することができ、なおかつ読影者間での測定誤差がなくなるという利点が得られた。ただし全自動CADの測定精度について検討した先行研究はこれまでなかったため、2名の放射線科医によって読影実験を行った。その結果、全自動CADの肺葉容積の測定精度は従来の半自動CADと同等であり、なおかつ入力から測定に要する時間を3分の1~2分の1に短縮することが可能で明らかな省力化が証明された。なおかつ読影者間の測定誤差はまったくなかった。本研究結果については英語論文として医学雑誌Interact Cardiovasc Thorac Surg.に報告し、原著論文としてアクセプトされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺葉容積測定CADの新手法を開発し、その測定精度について検討を行い、十分満足できる結果が得られたことから、本研究課題の遂行に道筋が開いたものと考える。これまでは通常撮影される吸気CTによる検討を行っていたが、近年、吸気・呼気CTによる呼吸機能のダイナミック解析が注目を集めており、本研究テーマにも取り入れていく必要がある。また撮影装置や画質の異なる3D-CT画像間での測定精度の検討はまだ十分とは言えず、さらなる検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は吸気CTと呼気CTの3D-CTデータを組み合わせた解析を行う予定である。肺葉ごとに吸気と呼気で収縮能が異なっていると考えられ、このことが呼吸機能に大きく影響している可能性がある。この点について知見が得られれば、肺葉切除術において上葉切除と下葉切除とで術後肺機能のシミュレーションに大きく貢献できると考えられる。さらに本年度購入した3D-CTファントムによる3D-CT画像の画質評価も行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は本研究テーマの最終年度に当たるため、研究費は主に統計解析ソフトウェアや海外を含めた学会旅費、参考文献の収集、論文校正費用として使用する予定である。
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